今週末に見たいアートイベントTOP5: 田名網敬一が挑戦する新しい屏風の表現、ミリアム・カーンの世界初公開を含む約30点
関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!
1. 私だったかもしれない ミリアム・カーン(ワコウ・ワークス・オブ・アート)
スイスの巨匠が絵画で提示する非人道的な社会問題
今年76歳になるスイスを代表する画家、ミリアム・カーン。EUで反核運動や第2波フェミニズムが台頭していた1970年代にパフォーマンスアートで作家活動を開始したカーンは、1994年からは油彩画を始め、現在は主に人物像を制作しながら、自然や動植物といった普遍的なモチーフと、シリアスで政治的な問題をテーマにしている。
同ギャラリーでは2年ぶり6回目の個展となる本展では、世界が大きく変わった2019年から2022年に描かれた作品を中心に、世界初公開を含む全30点の絵画作品を展示する。展示作には、現在進行形で起こっている非人道的な社会問題が、不特定で無名の人間像のなかに描かれている。その人物像は見つめる、両手をあげる、横たわる、子を抱くなどの誰もが共通して分かち合える動作が繰り返し描かれ、見る者と目線を共有できるように展示されている。カーンは、「展覧会はそれ自体が作品でありそれをパフォーマンスだと考えている」と語る。彼女の作品を通して、芸術が現代社会に果たす可能性を見つめたい。
私だったかもしれない ミリアム・カーン
会期:10月7日(土)~ 11月11日(土)
会場:ワコウ・ワークス・オブ・アート(東京都港区六本木 6-6-9ピラミデビル 3階)
時間:11:00 ~ 18:00
2. 産経新聞創刊90周年・フジテレビ開局65周年事業 モネ 連作の情景(上野の森美術館)
日本初公開作品を含む、モネの代表作60点以上が集結
印象派を代表する画家、クロード・モネ。同じ場所やテーマに注目し、異なる天候、時間、季節の移り変わりをカンバスに写し取った「連作」は、モネの画業から切り離して語ることはできない。1874年に第1回印象派展が開催されてから150年の節目を迎えることを記念し開催される本展は、モネの代表作60点以上を展覧する。
モネの代名詞として日本でも広く親しまれている〈積みわら〉〈睡蓮〉などの「連作」に焦点を当てながら、時間や光との対話を続けた画家の生涯を辿る。また、サロン(官展)を離れ、印象派の旗手として活動を始めるきっかけとなった、日本初公開となる人物画の大作《昼食》を中心に、「印象派以前」の作品もご紹介し、モネの革新的な表現手法の一つである「連作」に至る過程を追う。
産経新聞創刊90周年・フジテレビ開局65周年事業 モネ 連作の情景
会期:10月20日(金)~ 2024年1月28日(日)
会場:上野の森美術館(東京都台東区上野公園 1-2)
時間:9:00 ~ 17:00(金・土・祝は19時まで)
3. 「今⽇と、持続」(ARTRO)
磯⾕博史の3つのシリーズから「時間」について再考する
1978年生まれ。写真、彫刻、ドローイングの相互の関わりを通して、事物 への認識を再考する美術家、磯⾕博史の個展。本展ではJoiii Xu(Galerie Supermarkt)のキュレーションのもと、「時間」について多様な解釈を試みた3つのシリーズから作品を展示する。2011年から続ける代表的なシリーズ「着彩された額」は、日常で発見した景色を撮影し、セピアに加工。フレームの一部に色を付けることで鑑賞者に想像することを促す。
磯谷が購⼊し集めた5000 年前の⼩さな⼟器⽚を、もう⼀度泥に戻し、粘⼟と混ぜ合わせ焼成した「活性」は、プロセスを通して、過去の縄⽂時代の⼈々と共作する。「事のもつれ」は、写真をプリントし、額に収めるという⼀般的な制作プロセスを⼊れ替え、額を作り撮影し、撮影したその額にプリントした写真を収めることで、見る者に⼿順の認識に対する違和感をもたらす。Art Collaboration Kyoto助成企画。ギャラリーの1Fでは展覧会に合わせた創作菓子を販売しており、そちらも注目だ。
「今⽇と、持続」
会期:10月26日(木)~ 11月25日(土)
会場:ARTRO(京都府京都市中京区⾙屋町556)
時間:11:00 ~ 18:00
4. 熊谷亜莉沙 神はお許しになられるらしい(ギャラリー小柳)
自身の経験に重ねて描く、祈りに孕んだ暴力性や権力
自身のバックグラウンドを色濃く反映させ、富裕と貧困、生と死、愛と憎しみなど表裏一体の事象にスポットを当てる作品を制作してきた熊谷亜莉沙。同ギャラリーでは3回目の個展となる本展は、カトリックに由来するモチーフを中心とした絵画と、熊谷が綴った詩集を展示する。
絵画には祖父がブティックで扱っていたヴェルサーチのシャツや、教会巡りをする中で出会った石像が描かれている。それらに「祈り」や「暴力性」、同時に「権力」を孕む様子に、自身の家族像を重ねているという。人間が抱える数々の問題を仄めかし、人間の愚かさを謳いながら「神だけはお許しになられるらしい」としめくくる、熊谷が伝えるものとは。
熊谷亜莉沙|神はお許しになられるらしい
会期:10月31日(火)~ 2024年1月13日(土)
会場:ギャラリー小柳(東京都中央区銀座1-7-5 小柳ビル9F)
時間:12:00 ~ 19:00
5. Paraventi: Keiichi Tanaami - パラヴェンティ:田名網 敬一(プラダ 青山店)
87歳の田名網敬一が挑戦する、新しい屏風の表現
タイトルの「Paraventi」はイタリア語で「屏風」を意味する。現在のデジタル技術が屏風にどのような影響を与えるのかを探る展示を、中国・上海のPrada Rong Zhaiと東京のプラダ青山店で開催する。東京は1936年生まれの現代美術アーティスト、田名網敬一を特集する。
田名網は日本の漫画やネオ・ダダ運動に影響を受け、幼少時に経験した第二次大戦での照明弾や爆弾の爆発を繰り返しモチーフに用いており、カウボーイ、スーパーマンなどアメリカのポップアイコンを、伝統的な浮世絵の図案にミックスする。1960年代より注目され、スーパーフラット・ムーブメントの先駆けとして一時代を築いた。本展では、田名網が制作したパネル構造を用いた屏風作品を展示する。様々なモチーフが入り組んだ作品は万華鏡のようにカラフルで、美術史への意識も感じられる。
Paraventi: Keiichi Tanaami - パラヴェンティ:田名網 敬一
会期:11月3日(金)~ 2024年1月29日(月)
会場:プラダ 青山店(東京都港区南青山5-2-6)
時間:11:00 ~ 20:00