ARTnewsJAPAN

「新しい形の文化創出に貢献したい」──ホン・ジンキ(Jinki Hong)【アート界が注目するアジアの若手コレクター Vol.1】

今年34回目を迎えたUS版ARTnewsの名物企画、「TOP 200 COLLECTORS」リスト。中でも今年の注目は、アジアで台頭著しい若手コレクターの存在だ。その面々をシリーズで紹介しよう。

韓国・ソウルの実業家でアートコレクターのホン・ジンキ。Photo: Courtesy the Collector

拠点:ソウル
職業:ファッション小売業、不動産業、遺産相続、投資家
収集分野:韓国の現代アートと工芸品、現代抽象絵画、彫刻、家具、写真

写真を出発点に、絵画や彫刻、家具へと関心が広がる

パリのフォンダシオン・ルイ・ヴィトンでは、抽象表現主義の画家ジョアン・ミッチェルと印象派の巨匠クロード・モネと並べて紹介する「モネ-ミッチェル」展が2023年2月まで開かれていた。ホン・ジンキはこの展覧会を鑑賞した後、「美術史の大きな流れの中で次世代のアーティストをどのように捉えるべきか」、そして「現代において偉大な画家となり得るアーティストは誰か」に思いをめぐらせたという。

ホンのコレクションの中心となるアーティストは、デイヴィッド・ホックニーアレクサンダー・カルダー李禹煥イヴ・クラインナム・ジュン・パイクジェニー・ホルツァーなどだ。「コレクションを始めた当初は、自分の所有作品にこうした大物作家の名を連ねたいと思っていたのです。今では、これまでにないメッセージを発信している若手アーティストたちに注目するようになりました」

ホンは若い頃、写真を撮るのに夢中になっていた。そこから、絵画、彫刻、家具へと関心が広がったという。「写真には一瞬を切り取ることで生まれる深みと厚みがありますし、家具には視覚的な価値だけでなく、実用性によって得られる深い満足感があります」

井田幸昌《Og》(2022)Photo: Courtesy Mariane Ibrahim, Paris

コレクターは新しい形の文化を生み出す触媒になり得る

ホンは現在、約200点のコレクションを所有している。そこに最近加わった作品に、新進アーティストのエマ・マッキンタイアと井田幸昌の絵画がある。「若手アーティストの作品のおかげで、自分のコレクションがよりカラフルで豊かなものになります。そして、コレクターとアーティストは豊かな相互関係を築き、ともに成長していけるというのが私の考え方です」とホンは言う。

ホンは、パトロンとしてソウルにある国立中央博物館の収蔵品に助言を行うかたわら、所有する美術品を一般公開する展示スペースの開設を計画している。彼はこう抱負を語った。

「コレクターとして影響力を持てば、過小評価されているアーティストや新進アーティストの作品を世に広めるためのチャネルの役割を果たすことができるはずです。幅広い人たちが、まだ知られていないアーティストに関心を持つようインパクトを与えるのです。そして、これらの作品が他のアーティストやコレクターに影響を与えれば、ひいては新しい形の文化を生み出すことにつながります」(翻訳:清水玲奈)

from ARTnews

あわせて読みたい