人口3000人の田舎町から神殿跡を発見。遺跡保存のためスーパー建設計画を変更
イタリア中北部の山の中にある小さな町、サルシナの工事現場から、紀元前1世紀の神殿跡が発掘された。このひなびた場所が、古代ローマ時代には重要な防衛拠点であったことを裏付けるものと見られている。
古代ローマの劇作家、プラウトゥスの生誕地でもあるサルシナは、今では人口3000人あまりの田舎町だ。
この町で新しいスーパーマーケットとフィットネスセンター、子どもたちの遊び場の建設が進められていた2022年12月、作業員たちが遺跡を発見。その後、約580平方メートルにおよぶ四角い砂岩の構造物や大理石板が発掘された。
考古学研究者たちは、これを神殿の基壇だと推測している。調査チームのリーダーで考古学者のロミーナ・ピラリアは、米CNNの取材にこう答えた。
「ローマ神話の神、ジュピター、ジュノー、ミネルヴァに捧げられたと思われる3つの部屋が見つかっています。発掘は今も続けられていますが、ウンブリア人(*1)がこの地域に住んでいた紀元前4世紀までさかのぼる、より深い層にある遺構も確認済です。神殿全体は、私たちが今見ている規模よりさらに大きいかもしれません」
*1 古代ローマ以前に定住していた古代イタリアの民族。
この神殿遺構の発見は、サルシナがローマ帝国時代の戦略的な要衝で、重要性の高い場所であったことを裏付けるものだ。また、墳墓や火を使った跡なども見つかっていることから、建物が中世に再利用されていたと見られている。
なお、地元当局は、遺跡保存のためにスーパーマーケット等の建設計画の変更を行った。(翻訳:石井佳子)
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