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韓国アート通「OOTTOOGI」推薦!ソウル・アートシーンガイド

韓国で9月6日〜9日に開催されるアートフェア「Frieze Seoul」。せっかく現地を訪れるなら、フェア会場だけでなくソウル市内のギャラリーや美術館もチェックしたいもの。そこで今回、ソウルのアートシーンを多くの人に知ってもらうべく、韓国のクリエイターやアーティストから絶大な支持を誇る美術展紹介アカウント「OOTTOOGI」がARTnews JAPANに特別寄稿。OOTTOOGIが紹介するギャラリーや展示を参考に、ぜひソウルの街を歩き回ってみてほしい。

photo: instagram/@oottoogi

ARTnews JAPAN読者のみなさん、こんにちは。ソウルで2回目のFriezeが開かれる9月、日本から訪れるアートラバーにソウルのアートスポットをご紹介します。

「江南」と「漢南洞」には海外メガギャラリーが集結

Frieze Seoulの会場からも近い江南(カンナム)の島山公園(ドサン・パーク)一帯には「White Cube」や「PERROTIN」、「Gladstone Gallery」など海外メガギャラリーのブランチが集結しています。なかでも私が期待しているのは、Friezeに合わせて始まるWhite Cubeの展示「The Embodied Spirit」です。

また、韓国の30〜40代アーティストの傾向が一目でわかる「SONGEUN」の展示「PANORAMA」にも注目です。さらにエルメスの手掛けるスペース「アトリエ・エルメス」と9月に移転してきたばかりの「ONE AND J. GALLERY」では、パク・ミナの展示も。ひとりのアーティストをふたつのギャラリーがどう見せようとしているのか、比較してみるのも面白いかもしれません。

ショッピングエリアとしても知られる漢南洞(ハンナムドン)もまた、「Thaddaeus Ropac」や「PACE」、「Lehmann Maupin」、「Esther Schipper」など海外のギャラリーが多く集まっています。韓国随一の美術スポットとしてよく紹介される美術館「Leeum Museum」があるのもこのエリア。同美術館ではキム・ボムの個展が開催されているほか、Friezeに合わせてカン・ソギョンの展示も開催予定です。

漢南洞を訪れるなら「p21」や「Whistle」、「Gallery Baton」など韓国の主要ギャラリーもお見逃しなく!

美術館とギャラリーの伝統を知る「三清洞

国立現代美術館 ソウル館(MMCA)がある三清洞(サムチョンドン)には、「Artsonje Center」や「Kumho Museum of Art」といった伝統ある美術館や、「KUKJE GALLERY」に「Gallery Hyundai」、「PKM Gallery」など、長年韓国のアートシーンで重要な役割を果たしてきたギャラリーが集まっています。

現在、KUKJE GALLERYの本館ではチェ・ウクギョン、分館ではヤン・ヘギュの展示が開かれています。韓国を代表するふたりの女性作家の展示は見逃せません。とくにFrieze期間中はヤン・ヘギュの展示が特別に20時まで開かれているそう。秋の夜の趣を感じながら作品を鑑賞するのもいいですね。

Artsonje Centerでは、ス・ヨンソンの展示「My Name is Red」と若手アーティストたちの企画展「off-site」、「Bob Kil & Nina Beier: Field Trip」と3つの展示が同時開催中。 三清洞のなかでは新興スペースの「Museumhead」で行われている展示「Derby Match: Watchman and Spy」も要注目です。

アーティストラン・スペースの聖地「乙支路」

乙支路(ウルチロ)は、アーティストラン・スペースやオルタナティブスペースが集まるエリア。かつて印刷所や小さなオフィスとして使われていた古い建物が多いため、比較的賃料が安いことで知られています。数あるスペースのなかでもオススメなのは「N/A」や「Jungganjijeom」、「cadalogs」、「Euljiro OF」、「ArtspaceHYEONG」。三清洞からも近いのが嬉しいですね。

実験的映像作品に触れるなら「Frieze Film」

ソウル市内のスペース4カ所では、国内作家の映像作品にフォーカスした企画「Frieze Film」が開催中。キム・ソンウとチュ・ソンアというふたりのキュレーターが担当した今年の企画は、スペースごとに異なる作家がアサインされています。漢南洞の「MOTHER Offline」と「Amado Art Space」ではナム・ファヨン、ベク・ヘブン、ジュン・ソジュンの作品と、クァク・ソジン、パク・ソンミン、ピョ・ミンホン、ホン・イヒョンスクの作品が展示中。通義洞(トンイドン)の「BOAN1942」では、キム・ダウム、ムジン兄弟、イ・ウンヒ、ハン・ウリの作品が展示されており、北村(ブッチョン)の「Insa Art Space」では、キム・ヒョジェやアン・ジョンジュ、オ・ミョチョの作品を鑑賞できます。

いわゆる「アートフェア」が絵画や彫刻などコレクションしやすい作品に偏っているとしたら、Frieze Filmはそれ以外のジャンルの実験的な作品に触れられる素晴らしい機会となるはずです。

「金浦」に「大学路」……その他エリアもお忘れなく

もし金浦空港を使っているなら、空港近くの「Space K」にぜひお立ち寄りを。建築家のチョ・ミンソクが設計した美しい建物の中で、韓国系カナダ人アーティスト「Zadie Xa」の神秘的で叙事詩のようなペインティングが展示されています。

あるいは、大学路(テハンノ)の「ARKO Art Center」では、韓国の民衆美術を代表するノ・ウォンヒの個展「You were there」が開催されています。長年マイノリティを代弁する実践を続けてきたアーティストの作品が網羅的に展示されているため、ぜひ足を運んでみていただきたいです。

韓国で活動するアーティストの作品を観るのもいいですが、ソウルで日本のアーティストの作品に出会うと、思わぬ嬉しさを感じるかもしれません。「PACE」では奈良美智の彫刻作品が展示されているので、漢南洞を訪れた際に立ち寄ってみるのもいいかもしれませんね。

ギャラリー巡りでお腹が空いたら──

私のアカウント「OOTTOOGI」は、もともと美術展の近くにある美味しいお店を紹介するアカウントでした。

江南なら、晋州地域の伝統韓定食を味わえる「Hamo」がオススメ。漢南洞の「JARI」では韓国風にアレンジされたフュージョン中華料理を楽しめます。シグネチャーメニューであるタンスユク(韓国式酢豚)と海鮮おこげ鍋が特にオススメです。三清洞なら、寿司屋の「Sugimoto」を。この店名は日本の写真家・杉本博司にちなんでつけられた名前だそうです。日本と同じようなお寿司を味わえるかはわかりませんが、日本食が恋しくなってきたら上質な食材を使って丁寧なおもてなしを提供してくれる韓国の寿司屋を体験してみてもいいかもしれません(ただし、予約は必須です)。

乙支路なら、老舗と呼ばれるような古い食堂を訪れるのがいいでしょう。「ジョンジュオク」ではイカとカルビを辛く煮込んだ「イカプルカルビ」を、熱いスープのカルグクスを食べたいなら「デリョンチッ」にぜひ。もしこのエリアのホテルに宿泊しているならば、夜遅く帰ってきても早朝まで営業している「サメチッ」でポッサムを味わえますよ。

それでは、いいFriezeライフをお過ごしください!


Edit: Shunta Ishigami

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