警察暴力に抗うアートをめぐる検閲訴訟が再び法廷へ。注目される控訴審のゆくえ
2011年に警察によって射殺されたレイモンド・ヘリッセの肖像画がアメリカ・マイアミビーチ市によって撤去されたのは「言論の自由」の侵害にあたるとして、2020年に起こされた検閲訴訟の控訴審が始まった。
アーティスト、ロドニー・ジャクソンによる作品《Memorial to Raymond Herisse(レイモンド・ヘリッセを偲んで)》(2019年)は、2011年にマイアミビーチで行われたイベント、アーバン・ビーチ・ウィークエンドの中で警察に16発も撃たれたのち死亡したハイチ系アメリカ人、レイモンド・ヘリッセ(当時22歳)を追悼する肖像画だ。ビニールにモノクロで描かれたこの作品は、「I See You, Too」をテーマに掲げた2019年の「ReFrame Miami Beach Porject」にも出展され、そこではヘリッセの死を弔うキャンドルとともに展示された。
しかし、マイアミビーチ市当局が展示終了前にこの作品を撤去したことから、この行為が言論の自由の侵害であるとして、2020年、キュレーターのオクタヴィア・イヤーウッド、ジャレッド・マクグリフ、ナイオミー・ゲレロ、そしてアーティストのロドニー・ジャクソンを代表してアメリカ自由人権協会が市当局を訴えた。この裁判を担当したアメリカ地方判事のマーシア・G・クックは、「ReFrame Miami Beach Porject」に出品されていた作品は市の委託によるものであるため、言論の自由の侵害には該当せず、市には作品を撤去する権利があるとの判決を下した。
この判決を覆すべく起こされた今回の裁判では、所有権の問題と、作品の展示や撤去について市が態度を変えたかどうかが争点となった。原告側の代理人であるマイアミの法律事務所、バリエンテ・カロロ・アンド・マケリゴットのアラン・レビン弁護士は、「市がこの作品の制作を依頼したのではなく、市が学芸員にさまざまな視点から物語を伝える展示を行う権限を与えた」と主張している。
アメリカ控訴裁判所で行われた最新の公聴会で、巡回裁判所の裁判官アダルベルト・ジョーダンは前回の判決に疑問を呈し、「この作品は、弾痕から血を流し横たわる死者の上に、銃を持った警官が立っている姿を描いたものではない。私が見る限り、あくまで無害な芸術作品だ」と述べた。
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