BTSのRMに単独インタビュー。スーパースターが語るアートへの深い愛、初心者へのアドバイス
K-POPのスーパースターBTS。そのリーダーRMは、熱心なアートラバーとして、コレクターとして、そして自らのアート体験を発信するインフルエンサーとして強い存在感を放っている。そのRMにARTnewsが単独インタビュー。アートとの付き合い方、自分にとってのアートの意味などについて語ってくれた。
アート通として知られ、アート界からも注目されるRM。最近では世界最大のアートフェア、アートバーゼルのポッドキャスト「Intersections(インターセクションズ)」に出演。また、グーグルとのアート分野のコラボ「Googleストリートギャラリー」にも、BTSの他のメンバーたちとともに参加している。これは、グーグル・ストリートビュー上で、それぞれのメンバーが自分の好きな場所にお気に入りのアート作品を展示するというものだ。
ARTnewsでは6月に、RMの活動が米国の美術館に大きな影響を与えていることを伝えた。彼はワシントンD.C.のナショナル・ギャラリーなど、いくつもの美術館をインスタグラムで紹介している。その投稿を見たファンが、こぞって彼の紹介する展覧会を見に行くという現象が起きているのだ。
その記事が出る少し前、BTSの活動休止が発表され、メンバーたちは当面ソロ活動に専念することになった。そこでARTnewsは、次のステップに踏み出そうとするRMにメールでインタビュー。彼の人生でアートがいかに大きな意味を持つようになったか。どんなふうに展覧会や美術館を選んでいるのか。RMというスターとして美術館を訪れる場合と、キム・ナムジュンという個人として訪れる時の違いなどについて、RMは丁寧に答えてくれた。
──インスタグラムを日記代わりにしている人もいますが、あなたの場合は? 何か決まった目的があるのでしょうか?
最近の若い人たちは、インスタグラムで自分自身を表現していますよね。プロフィールやハッシュタグ、写真を撮った場所など、あらゆるところにその人らしさが表れるので、自己PRやセルフブランディングに向いていると思います。僕も誰かについて知りたいときは、その人のインスタグラムに目を通すことが多いですね。とはいえ、それだけで判断しないようにもしています。
僕のインスタグラムのアカウントは、僕自身の「単なる記録」です。ステージに立つ有名人としてのRMについては多くの方に知っていただいていますが......僕のインスタグラムはRMとキム・ナムジュン、両方の記録です。また、未来の自分のためでもあります。
──日常生活の中でアートとどう付き合っていますか?
一番面白いのは、自然や日常生活で見かけるものを「アートのレンズ」を通して解釈するようになったことですね。「フィンセント・ファン・ゴッホの絵に描かれている糸杉だ」とか、「ジョルジョ・モランディみたいなボトルだ」とか、そういうふうに思うようになりました。
──アートの世界における自分の影響力をどう思っていますか?
多くのアートラバーと同じように、機会があればすばらしい展覧会に足を運びたい。そして、感想をシェアすることで他の人にも楽しんでもらいたい。それだけです。
──2021年9月にニューヨークのメトロポリタン美術館でスピーチをされた時、キム・ナムジュン個人として再訪したいという発言がありました。RMとして美術館を訪れるのと、キム・ナムジュンとして訪れるのとでは、どんな違いがあるのでしょうか?
仕事で公の場に出る時は、責任を持って役割を果たすことが最優先です。なので、純粋にアートを楽しむためには、プライベートで行くことにしています。個人として展覧会を見ている時が一番幸せですね。
──展覧会に行くことが自分のニューノーマルになり、それがバランス感覚を保つのに役立っているとも話されていました。コロナ禍で美術館やギャラリーが閉鎖された時期は、どう感じていましたか?
コロナ禍でも、予約制で開館していた美術館やギャラリーは少なくなかったので、ほとんどの期間は見に行くことができました。ただ、お気に入りの場所が何カ月も閉鎖されていた時は、どうしようもない無力感に陥りましたよ。まるで、自分が長年そこに通いつめていたかのようにね。僕にとって既に生活の一部になっていたんです。
──何を見に行くかはどう選ぶのでしょうか? BTSの「Permission to Dance on Stage(パーミッション・トゥ・ダンス・オン・ステージ)」のロサンゼルス公演の後、米国各地の美術館を巡っていましたが、外国にいる時と韓国にいる時とで決め方は違いますか?
好きなアーティストの展覧会や、ずっと気になっていた場所を選ぶことが多いですね。たとえば、ニューヨークのグッゲンハイム美術館やメリーランド州のグレンストーン美術館などです。韓国にいる時は、韓国の近・現代アーティストの作品が見られる美術館によく行きます。海外では、興味のある美術館やアーティストを基準に選んでいます。
──あなたが訪れる美術館には、常設展や企画展で韓国人アーティストの作品が展示されていることが多いと思います。仕事で海外にいる時に韓国のアートを見るのと、国内で韓国のアートを見るのと何か違いがありますか?
アート作品は、それが置かれる環境によって、発するエネルギーや見る人の感じ方が変わってきます。僕はそういうことを考えるのが好きなんですよ。外国で韓国人アーティストの作品を見る時に国籍を意識することはあまりありません。とはいえ、尹亨根(ユン・ヒョングン)の作品をヴェネチアのパラッツォ・フォルチュニで見た時や、テキサス州マーファのチナティ財団でドナルド・ジャッドの作品と一緒に展示されているのを見た時に心打たれたのは確かです。
──テキサス州のチナティ財団のように、行くのにかなり骨が折れる場所もありますよね。「死ぬまでに訪れたい美術館」のリストを作って、そこから選んでいるのですか? それとも、仕事で訪れた場所から行きやすいところを選んでいるのでしょうか。
欧米には、世界的なトップコレクターや地方のコミュニティが運営する私設美術館やコレクションなど、行ってみたいところがたくさんあります。どのくらい遠くまで足を伸ばせるかは、その時のスケジュール次第ですが、チナティのような特別な場所にはできる限り調整をして行くようにしています。
──BTSの2021年のロサンゼルス公演の後のような、美術館巡りのドライブ旅行にまた出かける予定はありますか? 具体的に行きたいと考えている場所は?
機会があれば、またぜひやりたいですね。今まで行ったことのない場所を訪ねてみたいです。
──あなたがアートについて語る時によく話に出るのが、時間を超越する力、アーティストのキャリアの長さ、死後も作品が残るということです。絵画や彫刻という分野は、自分の活動分野よりも永続性があるもの、永遠に残るものなんでしょうか?
ベートーベン、バッハ、ビートルズ、ボブ・ディランなどのことを考えれば、音楽にも永遠に残っていく力があるのは間違いありません。でも、僕自身は、自分の仕事とは別の分野に、より深いレベルでの永遠性を感じるんです。
──あなたが、特定のアーティストやビジュアルアート全体に関する幅広い知識を持っていることは、アート界でもよく知られています。あなたのファン、あるいはそれ以外の人でもいいですが、アートについてもっと知りたいと思っているけれども、どこから始めればいいのか分からないという人たちに何かアドバイスはありますか?
まずは、近くにある国公立の美術館や小さなギャラリーに足を運んでみてはどうでしょうか。特に現代アートの場合はコンセプチュアルな作品が多いので、作品の見方や解釈の仕方が分からず、難しく感じるかもしれません。僕も難しいと感じることがありますからね。
でも、どんなものを見るか、どんなアーティストが好きか、作品から何を感じるかは、見る人それぞれで、あくまでも個人的なもの。自分の好みがわかってくれば、見る目も養われるはずです。そして、自分自身への理解も深まるかもしれません。それこそがアートの一番の醍醐味だと思います。(翻訳:野澤朋代)
※本記事は、米国版ARTnewsに2022年7月26日に掲載されました。元記事はこちら。