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速報!2023年アート・バーゼルParis+で見るべき作品ベスト10

パリグラン・パレ・エフェメールで、「Paris+ par Art Basel(以下、Paris+)」が開幕した(10月22日まで)。10月18日のVIPデーには、大勢の人たちで賑わったようだ。

今年もParis+の会場となったグラン・パレ・エフェメール。Photo: Courtesy of Paris+ par Art Basel

昨年初めて開催されたアート・バーゼルの「Paris+」は、今年はどうなるか関係者たちは不安を抱いていたかもしれない。しかし、18日に開催されたVIPプレビューデーで、それは解消されたようだ。通路は終日大混雑となり、ディーラーからは開場時間中に多くの売り上げ報告がもたらされた。

ハウザー&ワースではそれぞれ100万ドル(約1億5000万円)以上の作品が4点、ペース・ギャラリーでは、同ギャラリーに加わったばかりのアリッチャ・クワデの6万5000ドル(約970万円)の彫刻を含む数点が購入された。そのほか、タデウス・ロパックでは、200万ドル(約3億円)のロバート・ラウシェンバーグ作品、パリを拠点とするメヌール・ギャラリーでは、約350万ユーロ(約5億5000万円)相当の作品が購入されたという。

メヌール・ギャラリーのカメル・メヌールは初回売上報告書に添えた声明で、「VIPデーは、オープン以来国際的なコレクター、キュレーター、アート関係者が集まり、非常に活気に満ちています。Paris+の重要性が確認されました」と述べている。

以下、US版ARTnews編集部が選んだParis+のベストブースを紹介しよう。(各見出しは、アーティスト名/ギャラリー名の順に表記)

1. Ghislaine Leung/Maxwell Graham(ジスレイン・レオン/マックスウェル・グラハム)

ジスレイン・レオン《Monitors》(2022)Photo: Maximilíano Durón/Artnews

Paris+の通路を歩いていると、マックスウェル・グラハムのブースに違和感を覚えるかもしれない。2枚の絵は左寄りに掛けられており、中央の壁には何もないからだ。対面する壁にもカメラの小さな電球があるだけ。よく見ると、今年のターナー賞候補の1人であるジスレイン・レオンの作品のために、アートブースの美学を巧みに再構成したインスタレーションなのだ。

《Monitors》と題されたこのコンセプチュアルな作品は、「ある部屋に設置されたベビーモニターを別の部屋で見る」というシンプルな仕組みになっている。この作品の別バージョンは現在、タウナー・イーストボーンで開催中のターナー賞展で展示されており、そこでは美術館の美術品保管庫を映し出している。Paris+では、壁の反対側に小さなモニターが設置されていた。画面を覗き込むと、2点の絵画と、床に設置された彫刻が完璧な配置で映し出されている(写真参照)。

レオンの最近の作品の多くにベビーモニターが使われていることは重要だ。2022年に同ギャラリーで開催された個展のステートメントに、彼女はこう書いている。

 「(子育てのために)私はアートから手を引きたいわけではありませんし、娘の世話を完全にアウトソーシングしたいわけでもありません。アートと育児を両立させることで、この業界におけるアイデンティティと労働の条件を変えたいのです」

2. Hugh Hayden/Lisson(ヒュー・ヘイデン/リッソン・ギャラリー)

ヒュー・ヘイデン《Us》Photo: Maximilíano Durón/Artnews

リッソンのブースの中央には、フランスで調達した大きな木製の衣装だんすを使った、堂々とした木彫りの彫刻がある。中には、チェリー材で造られた、骸骨の胴体の彫刻2つが向かい合わせにつるされていた。《Us》と題されたこの作品の2体の骸骨は抱き合っているように想像されるが、恋人同士なのかもしれないし、友人同士なのかもしれない。これらの人物を骨だけにすることで、ヘイデンは彼らについて明確な結論を出すことを意図的に難しくしている。今回の展示は、来月リッソンのロサンゼルス・スペースで開催される展覧会のプレビューのようなものでもある。

3. Roberto Gil de Montes/Kurimanzutto(ロベルト・ジル・デ・モンテス/クリマンズット)

ロベルト・ジル・デ・モンテス《Boca Chica》(2022)Photo: Maximilíano Durón/Artnews

クリマンズットは、メキシコシティで生まれ、10代でロサンゼルスに移住してチカーノ・アート運動の中心人物となり、現在はメキシコ太平洋岸の小さな漁師町に住むロベルト・ジル・デ・モンテスの個展を開催した。ここに展示されている絵画には、彼の道程が描かれている。ブースの目玉である《Boca Chica》(2022)は、白いブリーフをはいた2人の男性と、白いタオルを胸に抱えた黒いパンツの男性を描いている。彼らの背後には浅い水たまりがあり、そこに大理石の彫刻の破片が置かれている。水たまりの向こうには墓地があり、メキシコの町ラ・ペニータ・デ・ハルテンバを示す隆起した地形とともに海が広がる。昨年のヴェネチア・ビエンナーレで注目を集めた、彼の作品のいくつかを思い起こさせる。

4. Sarah Lucas/Sadie Coles HQ(サラ・ルーカス/サディ・コールズHQ)

サラ・ルーカス《SIX CENT SOIXANTE SIX》(2023)Photo: Maximilíano Durón/Artnews

今年のParis+で最も注目を集めた作品のひとつが、サラ・ルーカスの《SIX CENT SOIXANTE SIX》(2023)だ。この作品は今年初め、イギリスのコルチェスターにあるFirstsiteで開催された、彼女のキュレーションによる展覧会「BIG WOMEN」でデビューした。ここではヴィンテージの黄色いトライアンフTR6が主役だ。現在、テート・ブリテンの研究対象になっているルーカスは、パンストの詰め物で作られた彼女の象徴的なバニーの彫刻をいくつか追加している。

5. SoiL Thornton/Galerie Neu(ソイル・ソーントン/ギャルリーノイ)

ソイル・ソーントン《Waisted Breathe》(2022)Photo: Maximilíano Durón/Artnews

ギャルリーノイのブースの端には、色あせた、真空パックされた18個のステンレス製のゴミ箱が並べられている。ゴミ箱はまるで買い物袋をすりつぶしたような奇妙な形をしている。パックする前に、ソーントンはそれぞれに希望や願いをささやいたという。この作品のタイトルは《Waisted Breathe》。

6. Lonnie Holley/Blum(ロニー・ホーリー/ブラム)

ロニー・ホーリー《The Catch of America》(2018)Photo: Maximilíano Durón/Artnews

ブラム&ポー改めブラムのブースでは、ロニー・ホリーの個展が開催されていた。中心は、彫刻作品群である。アトランタを拠点に活動するこのアーティスト兼ミュージシャンは、しばしば金属で溶接された廃棄物を使って彫刻を制作する。 その作品のタイトルは《The Catch of America》(2018)で、作品そのものとは異なり、心を揺さぶる美しい名前だ。

7. Cooper Jacoby/Fitzpatrick Gallery(クーパー・ジャコビー/フィッツパトリック・ギャラリー)

クーパー・ジャコビー作品。Photo: Maximilíano Durón/Artnews

クーパー・ジャコビーによる壁掛け彫刻は、不穏で興味をそそられる。Paris+のために制作されたこの作品は、シャルトルーズ(黄色がかった緑)色のロッカーに、トリッパを模したスポンジ状の塊が埋め込まれている。また、オレンジ色のダイヤル式ロックも付いており、ダイヤルは自動で頻繁に異なる4文字の単語(または単なるランダムな文字の組み合わせ)を綴るようにプログラムされている。私がブースに立っている間、その組み合わせは「TELL」から「SELL」に変わった。

8. Adriana Popescu/Plan B(アドリアナ・ポペスク/プランB)

アドリアナ・ポペスク《Stones from an imaginary museum》(1995)Photo: Maximilíano Durón/Artnews

プランBブースのメインは、ルーマニアを拠点にした故アドリアナ・ポペスクの彫刻作品数十点で埋め尽くされたテーブルだ。4点を除くすべてが、《Stones from an imaginary museum》(1995)と題された大規模なインスタレーションの一部である。同じ志を持つ同世代のアーティストたちと活動したポペスクは、ブロンズ、銅、大理石といった伝統的な素材の代わりに、新しい独特の視覚言語を創造する手段として、拾った木や吹きガラスといった素材を使って彫刻を制作した。

9. Charles LeDray/Peter Freeman, Inc.(チャールズ・ルドレイ/ピーター・フリーマンInc.)

チャールズ・ルドレイ作品。Photo: Maximilíano Durón/Artnews

ピーター・フリーマンInc.で展示されたチャールズ・ルドレイのテキスタイル彫刻は、茶色の格子縞のズボン、柄のシャツ、黒のジャケット、花柄のネクタイ、ハンガーがすべてミニチュアで作られている。そのため、アートフェアの慌ただしさの中では見過ごしがちな作品だ。ルドレイは、ヴィンテージの生地を使って服を作り、ボタンや留め具、ハンガーを製作するなど、一つひとつの要素を丹念に作り上げている。この作品は、男性が社会でどのように自分を見せるかについての鋭い視点を提供しているが、視覚的にも賞賛に値するものをたくさん含んでいる。

10. Tamara Henderson/Rodeo(タマラ・ヘンダーソン/ロデオ)

タマラ・ヘンダーソン《Sun Spider》Photo: Maximilíano Durón/Artnews

ロデオのブースには、今にも倒れそうな特大の椅子が置かれている。この《Sun Spider》と題されたタマラ・ヘンダーソンの彫刻は、一見ガラスのように見えるが、実はプラスチック製の透明な塊の上にそれぞれの脚を乗せたクモの形をしている。彼女は妊娠中にこの彫刻のコンセプトを思いついたという。2018年にベルリンのKW Institute for Contemporary Artで開催された展覧会「Womb Life」でも展示された。(翻訳:編集部)

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