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ハマスに拉致された200人のために、イスラエルの美術館で「安息日の食卓」が設置される

イスラエルにあるテルアビブ美術館の広場に、ユダヤ人とイスラエルの団体が安息日である10月20日に、ハマスに連れ去られた200人以上の人質に思いを巡らすための食卓を設置した。食卓には、行方不明者の人数分の食器が用意されている。

2023年10月20日、テルアビブ美術館の広場に設置された「安息日の晩餐会」の食卓。行方不明者の家族は、このテーブルを囲み、「カバラト・シャバット(安息日を迎える)」の特別礼拝に参加した。Photo:Getty Images

ユダヤ教では、毎週金曜日の日没から土曜日の日没までを「安息日」とし、一切の労働を停止。金曜日の晩には、豪華な食卓を囲む。

テルアビブ美術館に食卓を設置した主催者は、モザイク・ユナイテッド、世界シオニスト機構、人質の家族1000人以上が参加する人質・行方不明者家族フォーラムなどだ。タイムズ・オブ・イスラエル紙によると、出席者がいない安息日の食卓風景は、捕らわれの身となったユダヤ人への連帯の象徴なのだという。また、主催者たちは、1400人以上の市民が殺害され、4000人以上の負傷者が発生した、ハマスによるイスラエル南部への残忍な襲撃の生存者の証言とともに、ユダヤの詩や歌を掲載した小冊子も作成している。

誘拐されたユダヤ人への連帯の輪は世界に広がっている。ニューヨーク、ブエノスアイレス、ベルリンなどの都市では、地下鉄駅をはじめとする公共の場に、大文字で「KIDNAPPED(誘拐)」と書かれたチラシや、襲撃時に撮影された写真などが、イスラエル擁護派により掲示された。ニューヨーク・タイムズ紙によると、このチラシはイスラエルのアーティスト、ニッツァン・ミンツと彼女のパートナー、デデ・バンダイドによって制作されたパブリック・ストリート・アートであるが、同時にバイラル・アクティビスト・キャンペーンでもある。

ローマのユダヤ人街オーストラリアのボンダイ・ビーチでは、地元のユダヤ人コミュニティによって、襲撃に巻き込まれた子どもたちのために補助椅子付きの食卓テーブルが用意された。

Photo:Getty Images

ロイター通信によれば、ガザ地区には200人以上の人質がおり、その中には30人の子どもと20人の高齢者が含まれているという。10月20日には、イスラエルに住む家族を訪れていたイリノイ州出身のジュディス・ラアナンさん(59)とナタリー・ラアナンさん(17)の2人がハマスから解放された

ハマスのスポークスマンは、カタールの仲介により人質が解放されたと述べ、「人道的な理由からであり、バイデンと彼のファシスト政権による主張が虚偽であり、根拠がないことをアメリカ国民と世界に対して証明するためである」と語っている

イスラエル国防軍がガザに対して広範囲に空爆を行うなか、人質と行方不明者の家族フォーラムは、「#BringThemHomeNow」というメディア・キャンペーンを実施し、人質の窮状に注意を促した。人質の正確な所在は不明であり、ハマスによれば、すでに20人の人質がイスラエルの空爆によって殺害されたという。(翻訳:編集部)

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