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イスラエルとハマスの戦闘に対し、国際博物館会議が声明を発表。「重大な人道的影響に遺憾」

世界中の美術館・博物館に勧告と倫理基準を提供する非政府組織、国際博物館会議(ICOM)は、10月7日に起こったハマスによるイスラエルへの攻撃と、それに続くイスラエル側のガザ地区への報復に対する初の公式声明を発表した。

2023年10月25日、ガザ地区南部のカン・ユニスで、イスラエル軍の空襲により破壊された建物。Photo: Ahmad Hasaballah/Getty ImagesI

ユネスコインターポールとも協力関係を持つ国際博物館会議(ICOM)は10月25日、公式ホームページを通じて声明を発表した。

ICOMはこの声明の中で、「イスラエルパレスチナの市民に影響を及ぼしている現在の暴力について深い憂慮を表明し、この紛争が過去数週間にもたらした重大な人道的影響に遺憾の意を表します」と述べた上で、「すべての当事者に国際法と条約を尊重するよう」呼びかけている。この「条約」には、戦時下における文化財の保護を定めた1954年のハーグ条約も当然含まれる。

またICOMは、「これ以上の人命損失を防ぎ、コミュニティの人間性に不可欠な文化遺産を保護するために、国際人道法を尊重した即時停戦を期待し、文化遺産の保存と保護を通じて平和、理解、団結の原則にコミットすることを再確認します」とも述べている。

今回の声明ではハマスについて直接の言及はないが、1000人以上のイスラエル人を殺害した同組織による攻撃の3週間後に発表された。約200人の人質がハマスによって拘束されたが、現在までに解放されたのは数人。イスラエル軍はこれに対し、ガザ地区への食料、水、電気を遮断し、持続的な空爆を開始した。これまで6500人以上が死亡したと保健省は発表している。

これを背景に、イスラエルの主要な美術館の館長らはICOMに対し、「最大限の熱意をもって」ハマス非難を求める公開書簡に署名した。この公開書簡は、ICOMのイスラエル支部によって10月22日に発表された。

ICOMはこれまでにも、2022年のロシアウクライナ侵攻や、2020年のジョージ・フロイド殺害後のアメリカにおける反黒人差別に対して、支援を求める声明を発表している。

アメリカの美術館の多くは沈黙

アート業界ではほかにも、今月初めにアートフォーラムとe-fluxが、「占領され、包囲されたガザ地区で230万人のパレスチナ人が人道的危機に直面している。これについての沈黙を直ちに破る」ことを求める公開書簡を発表し、多くのアーティストやアート関係者が署名している。これに対し、ディーラーのドミニク・レヴィ、ブレット・ゴルヴィ、アマリア・ダヤンの3人は、この書簡にハマスの攻撃についての言及が含まれていなかったため、「その一方的な見解から公開書簡を非難する」と反論した。

また、アラブ首長国連邦を拠点に、強い影響力を持つシャルジャ・ビエンナーレを主催するシャルジャ・アート財団がインスタグラムで「ガザ住民に対する壊滅的な大量虐殺と、75年間続いているイスラエルの不法占拠に直面し、パレスチナと固く連帯する」と表明したほか、カタール美術館は、ガザ包囲が始まった直後にイスラム美術館のファサードにパレスチナ国旗を投影した。

一方、アメリカのほとんどの美術館がパレスチナとイスラエルの状況についてコメントを控える中、ニューヨークのエル・ムゼオ・デル・バリオ美術館は声明を発表し、「この不安定な時期に、私たちは多様で異なる信条や視点を持つビジターやアーティストを受け入れ続けています。直接、あるいはディアスポラ(パレスチナ・イスラエル以外の場所に離散したユダヤ人)や先祖伝来のものによって間接的に紛争の影響を受けている人々に、お見舞い申し上げます」と述べている。(翻訳:編集部)

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