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  • 2024.02.22

今週末に見たいアートイベントTOP5: ゴッホ作品を最新技術で「体感」、ヤン・ヴォーがプリントワークを世界初公開

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

@RB Creat

1. ゴッホ・アライブ 東京展(寺田倉庫G1ビル)

ゴッホ作品の新しい鑑賞体験がついに東京へ

フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)の作品世界を体感する没入型の展覧会として、これまでに世界99都市を巡回し、900万人を動員した。日本では、名古屋、神戸に続いての開催となる。オーストラリアの企画会社グランデ・エクスペリエンセズが手掛ける本展は、最新技術のマルチチャンネル・モーション グラフィックスと映画館品質のサラウンド音響、高精細のプロジェクターを組み合わせ、3000点以上の作品画像を展示室に巡らされた大きな壁や床などに映し出す。

その画像プログラムは、生まれ育ったオランダ、印象派の影響を受けて創作の幅を広げたフランス・パリ、名作を次々に生み出したアルルなど、ゴッホゆかりの地を辿るラインナップになっている。会場にはクラシック音楽が流れ、フランスの田園地方の暖かさを想起させる香りも漂う。「五感」を使っての鑑賞体験は、また違ったゴッホ作品の魅力を教えてくれるに違いない。

ゴッホ・アライブ 東京展
会期:1月6日(土)~ 3月31日(日)
会場:寺田倉庫G1ビル(東京都品川区東品川2丁目6−4)
時間:10:00 ~ 18:00(入場は1時間前まで)

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2. ミヤギフトシ、ハナ・クインラン & ロジー・ヘイスティングス Echo in the Memory(Yutaka Kikutake Gallery)

展示風景

セクシュアリティと権力をテーマに日英2作家が共演

異なるアプローチで、セクシュアルマイノリティと公共空間における権力関係に焦点を当てるミヤギフトシとハナ・クインラン&ロジー・ヘイスティングスの2人展。ミヤギフトシは、代表作である複合プロジェクト「American Boyfriend」で、出身地である沖縄で米兵と沖縄人男性との間に生まれ得た関係性をテーマにする。一方、ロンドン在住のアーティストデュオ、ハナ・クインラン&ロジー・ヘイスティングスは、徹底した資料アーカイブのリサーチに基づいて、絵画、映像、パフォーマンスなど多岐にわたる作品を制作する。2022年にテート・ブリテンで開催された展覧会「Tulips」では、フィレンツェのブランカッチ礼拝堂にあるフレスコ画からインスピレーションを得た架空のシーンをストリート写真のアーカイヴを用いて描き出し、公共空間における権力関係に迫った。

本展でミヤギは、日本初公開となる《Hope We’ll See Each Other Soon Again》(2009-2024)を含むインスタレーションを展示する。沖縄を取り囲むフェンスがすべて赤い毛糸で出来ていたら、という想像のもとに制作されたこの作品は、痛みや隔たりを連想させる柵のイメージと異なり、つながりと受容が主体の詩的な世界観を喚起する。クインランとヘイスティングスは、ゲイ・カルチャー(その表象、政治、人間関係)と警察(その戦略と集合体)の交わりを3章形式で表現した映像作品《Gaby》(2018)を披露する。

ミヤギフトシ、ハナ・クインラン & ロジー・ヘイスティングス Echo in the Memory
会期:2月10日(土)~ 3月9日(土)
会場:Yutaka Kikutake Gallery(東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル2F)
時間:12:00~19:00


3. 勅使河原蒼風(タカ・イシイギャラリー)

© Sogetsu Foundation / Courtesy of Sogetsu Foundation and Taka Ishii Gallery / Photo: Kenji Takahashi

いま再評価が進む作家の「創作への欲望」

いけばな草月流の創設者である勅使河原(1900-1979)は、戦後の前衛いけばな運動を主導しながら、造形作家として同時代の国内外の現代美術とも接続し、牽引した稀有な存在だ。近年では再評価が進み、今年3月に開催される横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで生きてる」にも参加する。同ギャラリーでは2回目の個展となる本展では、屏風、書、平面作品12点を展示する。

見どころの一つは、「富士山」を描いた作品だ。1960年代の初めから勅使河原は富士山を主題とした屏風、油絵、水彩作品を数多く制作した。山中湖畔に構えた別荘から、日の出前、日中、夜までこの霊峰を眺め、「変幻無限であり、生々流転」な姿を、多様な色彩と柔らかな線、そしてデッサンのような素早い筆致で描いた。勅使河原の彫刻作品や書からは、獣のように猛々しい自然や、それに対する畏怖の念が感じられるが、この作品からは親しいものを愛でるような穏やかな感情、そして自らの心の変化に瞬時に反応し、それを造形せずにはいられない強靱な創作への欲望を伺い知ることができる。

勅使河原蒼風
会期:2月10日(土)~ 3月16日(土)
会場:タカ・イシイギャラリー(東京都港区六本木6丁目5−24 complex665)
時間: 12:00~19:00


4. ヤン・ヴォー(Take Ninagawa)

ヤン・ヴォー《untitled》2018–23年 © Danh Vo. Courtesy of Take Ninagawa, Tokyo.

国際的評価を得るアーティストが新作を世界初公開

1975年ベトナムに生まれ、現在はベルリンとメキシコ・シティを拠点に活動するヤン・ヴォー。彼は4才の時に、父親の手製のボートで家族とともにベトナムから逃れた。海上でデンマークの船に救助され、難民キャンプを経てデンマークに移住。コペンハーゲン王立美術学校やドイツ・フランクフルトのシュテーデル美術学校で学んだ経歴を持つ。これまでグッゲンハイム美術館(2018年)や国立国際美術館(2020年)、ウィーンのセセッション(2021年)、パリのピノー・コレクション(2023)などでの個展のほか、第58回ヴェネチア・ビエンナーレへの出展経験を持つ。

ヴォーは、自身の経験や家族の歴史、社会的または政治的な歴史に彩られたレディ・メイドのもの、また、彼の周辺の大切な人たちの手によるものを取り込んで作品にする。それらを通じて、アイデンティティや歴史、権力、覇権主義、エロティシズムなどのテーマを直接的あるいは比喩的に表出させ、鑑賞者には異なる角度からの視点を提示する。ヴォーの同ギャラリーでは5年振りとなる本展では、新作のプリントワークを世界に先立って初公開する。

ヤン・ヴォー
会期:2月17日(水)~4月27日(水)
会場:Take Ninagawa(東京都港区東麻布 2-14-8)
時間:11:00~19:00 


5. CURATION⇄FAIR Tokyo(kudan house)

登録有形文化財の建築にも注目。「展覧会で観て、アートフェアで買う」初のアートイベント

キュレーターが手掛けた展覧会で作品の社会的意義を読み解き、アートフェアで作品コレクションを楽しむという2部構成のアートイベント。第1回目となる今回は、シニアアドバイザーに山本豊津、キュレーターに遠藤水城が参加した。展覧会「美しさ、あいまいさ、時と場合に依る」は、ノーベル文学賞を受賞した川端康成、大江健三郎の文化論を現在の日本美術の状況へと重ね合わせ、さらにその先へと向かう試行を展開。古美術から近現代美術、デジタル・アートまで、様々な作品が織りなす複合的な「時間の層」から、ラディカルな芸術の在り方を導き出す。展示作家は青木野枝、合田佐和子、橋本聡、香月泰男、山口長男など。

3月9日からはアートフェア「Art Kudan」を開催。「時所望」というテーマのもと、古美術から近代現代美術までの作品を展示販売する。参加ギャラリーはANOMALYタカ・イシイギャラリーMISAKO & ROSEN小山登美夫ギャラリー東京画廊+BTAP、中長小西、浦上蒼穹堂など。1927年に建てられた登録有形文化財「旧山口萬吉邸」をリノベーションした「kudan house(九段ハウス)」というロケーションにも注目だ。美しいアーチを多用し細部に造形を凝らした洋間や、木材を贅沢に使った和室とアート作品との共演も楽しんでもらいたい。

CURATION⇄FAIR Tokyo
会期:展覧会2月22日(木)~ 3月3日(日)、 アートフェア3月9日(土)~ 3月11日(月)
会場:kudan house(東京都千代田区九段北1-15-9 )
時間:展覧会 平日10:00 ~ 21:30(土日祝は 21:00、3月3日は18:00まで) 、アートフェア11:00~19:00(いずれも入場は30分前まで)

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