開幕が迫るヴェネチア・ビエンナーレで、モロッコ館が突然計画を白紙に
4月20日から11月24日まで開催される第60回ヴェネチア・ビエンナーレ。初参加となるモロッコが、突如代表アーティストとキュレーターを降板させたと1月17日、Le Monde Afriqueが報じた。
第60回ヴェネチア・ビエンナーレの国別パビリオンは、ベナンと並んでモロッコの初参加が決まり、これまで準備を進めてきた。
1月15日、モロッコ館のキュレーター、マヒ・ビネビネのもとにモロッコ文化省の高官から電話があり、何の説明もなく、キュレーターを美術史家で独立キュレーターのムーナ・メクアールに変更するので、彼が選んだ3人のアーティスト、サファア・エルルアス、マジダ・カタリ、ファティハ・ゼンムーリもビエンナーレに参加出来ないと告げたという。ビネビネは、この「土壇場での決定」が理解できなかった。
ビネビネはLe Monde Afriqueの取材に対して、「1月11日の締め切りまでに数万ユーロを費やして3カ月でプロジェクトを完了させ、全ての作品画像をビエンナーレに送りました」と話す。また、ビネビネとアーティストたちは、ビエンナーレの準備のために2023年9月にヴェネツィアを訪れ、パビリオンの場所を視察し、ディレクターであるアドリアーノ・ペドロサと面会している。準備の数ヶ月間、彼らは資金を立て替えており、払い戻しに関して同省と何度も連絡を取り合い、追加の融資も約束していた。
モロッコ代表アーティストの1人だったサファア・エルルアスは、「モロッコ代表として光栄に思っていたので、情熱を持って働いていました。今は悪夢のようです」と語った。ヴェネチアで展示する全長12メートルのインスタレーションを制作するために、2つ目の工房を借り、数十人に協力してもらったという。「アーティストを支援し、促進するはずの機関が、どうしてここまでアーティストを軽んじることができるのでしょうか」と彼女は言った。
この件についてヴェネチア・ビエンナーレとモロッコ文化省にコメントを求めたが、すぐに返答はなかった。
第60回ヴェネチア・ビエンナーレは、国別パビリオンとは別に、メイン展示はディレクターのアドリアーノ・ペドロサがキュレーションする。展示のタイトルは「Foreigners Everywhere(外国人はどこにでもいる)」。その説明によれば、「国境を越えた人々の移動と存在に関する複数の危機が蔓延している、ボーダレスな世界」というコンセプトを探求するという。
1月16日、マヒ・ビネビネは自身のインスタグラムに声明を投稿した。その中で、ビネビネとアーティストたちは、モロッコ館を担当する新しいチームに「世界中のすべての成功」を祈った。「尊厳をもって、私たちを傷つけるこのモロッコに希望を持ち続けます」と、彼らはメッセージを結んでいる。(翻訳:編集部)
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