ARTnewsJAPAN

1曲の演奏時間は639年! ジョン・ケージの「世界で最も長い曲」のコードが2年ぶりに更新される

ドイツの教会で2001年から演奏が続く、実験音楽家、ジョン・ケージ(1912-1992)の作品《As Slow As Possible(ASLSP)》のコード変更が2年ぶりに行われた。

2024年02月05日、ジョン・ケージ《As Slow As Possible(ASLSP)》の16回目のコード変更が行われた。Photo: Matthias Bein/picture alliance via Getty Images

アメリカの実験音楽家ジョン・ケージは、前衛芸術に多大な影響を与え、音楽の定義を広げた人物として知られる。演奏者は音を出さず、聴衆はその場に起きる音を聴くという彼の代名詞的作品《4分33秒》(1952)は、これまで世界各国で「演奏」され、個人で同作品を演奏できるiOSアプリ「4' 33" - John Cage」まで発売された。

そのジョン・ケージの世界で最も遅く、最も長い楽曲、《As Slow As Possible(ASLSP)》の演奏は、ドイツのハルバーシュタットにあるブルチャルディ教会で2001年に始まった。開始から1年半は無音が続き、最初の音が鳴ったのは2003年のこと。特製の機械式オルガンで演奏されるこの曲は、8つのパートで「できるだけゆっくり弾く」という明確な指示があるが、正確なテンポは書かれていない。この曲の演奏が終わるのは、616年後の2640年だ。

そして2月5日、大勢が見守る中で16回目のコード変更が行われた。ジョン・ケージ・オルガン財団の理事長ライナー・O・ノイゲバウアーが機械式オルガンにパイプを1本追加すると、新たな音色が生み出された。BBCによると、これを見るために何年も前にチケットを購入していた人もいたという。

2022年のコード変更の様子。

前回コードが変更されたのは、2022年2月5日だ。同財団のウェブサイトによれば、次回は2026年8月5日に予定されている。

《As Slow As Possible(ASLSP)》の1987年初演時の演奏時間は30分弱だった。ケージの死後、音楽家と哲学者がこの作品を再解釈したことで長い演奏時間となり、2009年の演奏は15時間近くに及んだ。(翻訳:編集部)

from ARTnews

あわせて読みたい