香港の芸術文化振興プロジェクトが深刻な資金不足? 2023年は約247億円の赤字
M+美術館や香港故宮博物院などを管轄する西九龍文化区管理局は2025年3月にも資金不足に陥り、現在提出されている新たな資金計画が香港政府に承認されなければ追加融資が必要になる可能性がある。
2月14日、香港・西九龍文化区管理局(以下、WKCDA)のCEOを務めるベティ・ファンは、管理局の資金状況について深刻な懸念を示した。同地区は香港の芸術文化振興のために計画・推進されてきた政府肝入りのプロジェクトで、その開発には2008年に香港市議会で承認された216億香港ドル(直近の為替レートで約4100億円、以下同)が投じられている。
ファンが地元メディアに説明したところによると、2022から23年のWKCDA全体の動員数は400万人以上。そのうち現代美術館のM+は270万人、香港故宮博物院では125万人の来場者を記録した。
非営利ニュースサイトの香港フリープレスは、特別展示が増加したことで今年の来場者数はさらに伸びる確信があるというファンの話を伝えている。また、上記2つの美術館のチケット販売による収入で経費の半分近くをカバーしており、そのレベルは「国際的に有名な美術館と同等か、それ以上」だという。それでも、展覧会の保険や運送費、光熱費、管理費、人件費などにかかる残りの費用はWKCDAの負担になる。
香港スタンダード紙はファンの言葉をこう伝えている。
「現在の西九龍文化区は借入金に依存しています。借入金頼みを続けるのは当局にとって最悪のシナリオでしょう」
WKCDAの最新年次報告書を見ると、2023年の同組織の赤字額は前年の15億香港ドル(約285億円)からやや減少したものの、13億香港ドル(約247億円)を超えている。そのため、収入増を目的とした計画が昨年香港政府に提出されたが、WKCDAはまだ回答を受け取っていない。
同局の財務状況が不透明なままだと、海外の美術館との協力が必要な今後の展覧会計画に支障をきたしかねないとして、ファンは早期の承認を政府に求めている。なお、香港フリープレスによると、WKCDAによる提案の詳細は公表されていない。
ファンの懸念表明を受け、同じ2月14日に文化・スポーツ・観光局局長のケビン・ヨン局長は、当局とWKCDAとの協力関係は変わらないとして記者団に広東語でこう述べた。
「西九龍文化区の設立に政府は多大な資金を投入し、土地(の取得)や建設を援助しました。これからも問題解決のために彼らとの協力を続けます」(翻訳:石井佳子)
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