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  • 2024.03.12

パレスチナへの連帯を示すアーティストらが展示から作品を撤去。「自由な議論の場を持たない機関とは仕事しない」

現在、世界では様々なアーティストやアート業界のプレイヤー、関係者たちが、パレスチナへの連帯を示す抗議行動をそれぞれの方法で行っている。ロンドン・バービカンセンターでは、開催中の企画展から三人の作家の作品が本人たちの要請により撤去された。この展示から作品が取り下げられるのは2度目だ。

作品が展示されていた場所に、撤去の理由を示すキャプションが設置された。Photo: Courtesy of Censorship at the Barbican

世界中で、アーティストやアート業界のプレイヤーたちによるパレスチナへの連帯を示す抗議行動が行われる中、ロンドンのバービカン・センターでは、同館がインド人アーティストのパンカジ・ミシュラによるパレスチナとイスラエルについての講演を中止したことに対し、3人のアーティストが出品作品を取り下げるという方法で抗議を行った。

バービカン・センターでは現在、テキスタイル・アート展「Unravel: the Power and Politics of Textiles in Art」が開催されているが、本展に作品を貸し出していた二人のコレクター、ロレンツォ・レガルダ・レヴィステとファハド・マイエが2月29日、ミシュラの講演中止を受けて、貸出作品(ロレッタ・ペットウェイのキルト作品2点)を返すよう同館に要請。これに続くかたちで、出品アーティストのディードリック・ブラッケンズ、イト・バラダ、シアン・デイリットの3名は、自分たちの作品を本展から取り下げるよう求めた。

レガーダ・レヴィステとマイエは、2月末に所蔵作品の貸出を取りやめる決断に至った理由を、同センターの「検閲と抑圧」に抗議し、「パレスチナと連帯するため」であると説明。バービカン・センターはその後、ペトウェイの2作品が展示されていた台座に、次のような注釈をつけた。

「バービカンセンターがロンドン・レビュー・オブ・ブックス(LRB)の冬季レクチャー・シリーズの中止を決定したことを受け、貸し手がパレスチナとの連帯を示す行動としてこれら2作品の撤去が要請されました」

バービカンの広報担当者によれば、同館は「本展から作品を取り下げたいというアーティストの決定を尊重」しているといい、彼らの作品はすでに展示から外している。また、それぞれの作品があった場所に同様の説明を設置した。

アーティストと美術館、それぞれの想い

クィアと黒人のアイデンティティの歴史的な複雑さを探求するアメリカの織物作家、ブラッケンズが今回取り下げたのは、《fire makes some dragons》という作品だ。ブラッケンズは、今回の決定について「私は、私自身が行っているテキスタイル及びより大きな実践と、バービカンセンターという機関について私が知っていることを明確にしておきたい」と述べた上で、こう説明する。

「ガザで行われている歴史的、そして現在進行形の暴力に反対する私たちの声を封じ込めるという組織は、共犯者です。その共犯関係を暴露するために、この展覧会が作品ごとに解体せざるを得ないことを残念に思います」

さらにブラッケンズは「不本意ながら」と前置きし、自身が感銘を受けたアーティストの作品が撤去され続けたことは、キュレーター・チームの「善意あるヴィジョン」を結果的に「汚す」ことになったと指摘する。

また、フランス系モロッコ人アーティストのイト・バラダは、Art Newspaperに寄せたコメントの中で、「芸術機関全体に忍び寄る検閲の常態化」に強い懸念を示している。

「たとえそれが一部の職員や理事、あるいは政治家に対する挑戦であると捉えられようとも、自由な思考と討論の場を持たない公的機関を私たちは真剣に受け止めることはできません」

二人のコレクターと同様に、作品撤去の理由を展示空間の中で明示することをバービカンに要請したというバラダは、コメントを「ガザの平和と正義、そして即時停戦を祈ります」と締めくくった。

バービカンの広報担当者によれば、これらの作品撤去を理由に展覧会を早期終了することはないといい、「こうした事態に発展した原因を徹底的にレビューしている」という。また同館のクレア・スペンサー最高経営責任者(CEO)は声明の中で、「デリケートな内容を扱う講演を開催するために必要な、入念な準備ができなかったことを残念に思う」と述べた。

ミシュラが予定していた講演「The Shoah after Gaza(ガザ後のショア)」は、ショア(ヘブライ語でホロコーストを意味する)とイスラエルによるガザでの軍事作戦との歴史的な関連性について考察するものだった。「The Shoah after Gaza」は最終的に、クラーケンウェルのセント・ジェームズ教会で開催された。

from ARTnews

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