ARTnewsJAPAN

アメリカの民家で発見された琉球国王の肖像画が、約80年ぶりに沖縄へ返還。4月にメディア公開予定

FBIは、アメリカ・マサチューセッツ州の民家から第2次世界大戦の沖縄戦で奪われた文化財22点を回収し、3月14日、沖縄県に返還した。

アメリカの民家から見つかった沖縄戦の略奪文化財。Photo: Courtesy Federal Bureau of Investigation

2023年1月、FBIボストン支局のジェフリー・J・ケリー特別捜査官は、略奪文化財かもしれない大量のアジア美術品が個人宅から見つかったと通報を受けた。 この住宅は、第2次世界大戦時に従軍していた退役軍人が所有していたもので、元軍人の死去後、その子どもが遺品を調査している時に、屋根裏部屋で美術品を発見したという。

FBIは、盗まれた美術品に関する情報を提供するためのデータベース「全米盗難美術品ファイル」で照合し、スミソニアン博物館に依頼して調査した結果、それらの美術品は、琉球王朝の第二尚氏第13代国王尚敬と第18代国王尚育の肖像画「御後絵」を含む18〜19世紀の絵巻物6点、19世紀の手書きの沖縄地図と陶器や陶磁器の破片であることが判明した。

大戦末期の沖縄戦で、多数の琉球王国(1429-1879)の名宝や文書が略奪されており、沖縄県は2001年に、「御後絵」など13件の流出文化財についてFBIの盗難美術品ファイルに登録申請をしていた。2023年3月、FBIは外務省を通じて流出文化財22点が発見されたと沖縄県に照会し、2024年3月14日に行われた公式式典で、玉城デニー沖縄県知事に文化財を返還した。

これまで御後絵はモノクロ写真の資料しか無かったが、実物が見つかった事により、その鮮やかな色彩が明らかになった。そして、ケリー特別捜査官は今回の捜査について、こう語った

「元軍人の遺族は正しいことをしました。御後絵は沖縄の王族を描いたものであり、文化的アイデンティティの一部であるため、特に重要なものです。国家の文化的アイデンティティは、工芸品と歴史に集約されます。これが文化を作るのです。ですから、文化財の管理者である私たちは、文化財がその国に戻るよう、できる限りの努力をすることが本当に重要なのです」

文化財は那覇市の県立博物館・美術館で29日まで燻蒸し、4月に関係者やメディアに公開する予定だ。(翻訳:編集部)

from ARTnews

あわせて読みたい