「幽霊屋敷」から持ち出されたヘンリー8世のステンドグラスのオークション取り止め、当局の介入に競売会社が反論
ヘンリー8世とアン・ブーリンの婚姻を祝って作られた貴重なステンドグラスの紋章が、オークション直前に出品取り下げとなった。歴史的な文化遺産の管理を行うイギリスの公的機関ヒストリック・イングランドが、その取得方法について疑義を呈したためだと英ガーディアン紙が伝えている。
ステンドグラスの紋章の競売は、イギリス南西部ドーセット州にあるオークション会社、デュークスが予定していたもの。しかし、専門家がヒストリック・イングランドに通報したところでは、紋章には元あった窓から取り外された形跡があるとされている。
ステンドグラスが持ち出されたのは、ドーセット州北西部、サンドフォード・オーカスの歴史的な邸宅だ。敷地が約30ヘクタールあるこの邸宅自体、1736年以初めて売りに出されており、売買価格は650万ポンド(約12億2000万円)になると見られる。
実は、この場所はイギリスでも有名な「幽霊屋敷」の1つ。「不気味な外観で、灰色の石壁がいかにも伝統的な幽霊屋敷といった風情」だと評されている。出没する幽霊は、農夫、下男、3人の女性、そしてステンドグラスに魅せられた若者だという。
オークションから取り下げられたうちの1つは、チューダー朝の王ヘンリー8世がイギリス南東部に建てたノンサッチ宮殿にあったものと考えられている。建物はのちに解体されて礎石だけが残っているが、宮殿の装飾品はイギリス各地の館や邸宅で見つかっている。
ドーセット州当局は、問題の紋章は歴史的に重要な「第1級指定建造物の一部であるにもかかわらず」取り外されたと主張。一方、デュークス社はガーディアンの取材に、紋章は窓に固定されていたのではなく、ワイヤーで吊るされていたもので、ヒストリック・イングランドはこの事実を知っていたと反論し、当局が「なぜその事実を考慮せず、ステンドグラスをオークションから取り下げるよう要求したのか分からない」と答えている。
ガーディアンによれば、デュークス社は問題解決に向けて、歴史・文化遺産関連団体との協議を続ける。(翻訳:石井佳子)
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