《真珠の耳飾りの少女》を攻撃した活動家、控訴審で勝訴。過剰な厳罰で「平和的抗議への意欲」を奪うべきではないと判断
2022年、オランダのマウリッツハイス美術館で展示されているヨハネス・フェルメールの《真珠の耳飾りの少女》がアートアタックの対象となった。これに対して活動家らには2カ月の懲役刑が言い渡されていたが、オランダの控訴裁判所はこれ以上の実刑は過剰と判断した。
オランダの控訴裁判所は、ヨハネス・フェルメールの《真珠の耳飾りの少女》に身体をのり付けしたことで2カ月の懲役刑を受けた三人の気候変動活動家に対して、刑期を全うする必要はないと判断を下した。
CNNの報道によると、抗議団体「ジャスト・ストップ・オイル・ベルギー」の一員である活動家たちは、裁判に至るまでの23日間を待機房の中で過ごしたという。これ以上の懲役刑は「過剰になる可能性がある」と裁判所側は判断した。活動家らは、「ジャスト・ストップ・オイル」と書かれた白いT-シャツを身に着けていたが、「ジャスト・ストップ・オイル・ベルギー」は同名のイギリスの団体とは関係がないとCNNは報じている。
また、厳罰を科すことによって「萎縮効果」をもたらし、平和的な抗議や表現の自由を行使しようとする人々の意欲を削がないようにしたいと、裁判所は付け加える。
デン・ハーグのマウリッツハイス美術館に展示されているフェルメールの代表作が、アートアタックの対象となったのは2022年10月のこと。一人の男が保護ガラスで覆われた絵に自身の頭を接着剤で貼り付け、二人目の男がその上からトマトスープをかけたのだ。そして、3人目の活動家はその様子を撮影していた。
《真珠の耳飾りの少女》が攻撃された後、美術館は絵画に被害はなかったと声明を発表。だがオランダ検察は、19世紀に作られた額縁に損傷があったと発表している。
アートアタックは、政治的な変化を求める際に人々の関心を引く手法として長いこと用いられてきた。例えば2022年には、ヨーロッパ中の活動家たちが、気候変動対策を求めるために、マッシュポテトやハンマーを駆使しながら著名な作品に攻撃を仕掛けた。また、最近の例を挙げるとすると、2023年の11月に「ジャスト・ストップ・オイル」の活動家たちが、ロンドンのナショナル・ギャラリーにあるディエゴ・ベラスケスの傑作《鏡のヴィーナス》を救助用ハンマーで攻撃している。(翻訳:編集部)
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