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  • 2024.03.20

「文化的抹殺に加担している」──バービカン・センターの「検閲」に対して抗議者が説明を要求

ロンドンのバービカン・センターで開催される予定だった講演が中止されたことを受け、抗議者たちが同館でデモを実施。参加者たちはバービカン・センターによる「検閲」に対する説明を求めた。

3月16日、親パレスチナ派の抗議者たちが、バービカン・センターのロビーに集まった。 Photo: Instagram via Censorship at the Barbican

ロンドンのバービカン・センターで予定されていた講演は、インド人作家のパンカジ・ミシュラによる、ホロコーストとイスラエルによるパレスチナ侵攻の歴史的類似性を考察する内容だった。この講演の中止を受け、3月16日の午後、抗議者たちは「ゲリラ・フェスティバル」を開催するため同センターのロビーに集結。パレスチナ人のアーティストによる詩を朗読し、ダンスを披露した。

このデモを主導したのは、親パレスチナ派の抗議団体「Culture Workers Against Genocide」だ。バービカンでは今回の検閲疑惑が引き金となり、デモだけでなく、2月13日にスタートしたテキスタイル・アート展「Unravel: the Power and Politics of Textiles in Art」の出品アーティスト4名と作品を貸し出していたコレクター2名が、開始から2週間も経たないうちに展示作品の取り下げを要請する事態に発展。合計9作品が展示スペースから姿を消すこととなった。

今回のデモでは、同館の中2階に抗議者たちが立ち、「Stop Cultural Genocide(文化的ジェノサイドをやめろ)」「Let Us Speak(私たちの声を聞け)」と書かれた巨大な横断幕を広げた。その階下では、「Stop Killing Artists(アーティストたちを殺すな)」と書かれた旗が振られていた。この旗は、パレスチナへの攻撃が10月7日に始まってから殺害された3万人以上の作家や芸術家のことを指している

抗議者たちが当日配布し、InstagramアカウントのCensorship at the Barbicanに投稿されたビラには次のように記されている。

「バービカンは、パレスチナ人と親パレスチナ派の発言を検閲し、黙らせることに加担してきた。この検閲は、イスラエル軍による大量殺人と並行して行われているパレスチナ文化の抹殺に加担しているのだ」

予定されていたパンカジ・ミシュラの講演は、イギリスの書評誌『ロンドン・レビュー・オブ・ブックス』による主催で開かれるはずだった。講演タイトルは「The Shoah after Gaza」で、ショア(ヘブライ語でホロコーストの意味)とイスラエルのガザにおける軍事作戦との歴史的類似性を検証するものだった。

2月14日にバービカン・センターが発表した声明によると、『ロンドン・レビュー・オブ・ブックス』との間でミシュラの講演を主催する正式な合意は成立しておらず、イベントの詳細が「確定する前に」公表してしまったという。また、同館の上層部は「このセンシティブな内容を吟味するために必要とされた入念な準備期間が設けられていなかった」と述べている。

Culture Workers Against Genocideは、バービカン・センターの最高責任者クレア・スペンサーと評議会に対し、ミシュラの講演の中止と、パレスチナで配信されているネットラジオ「Radio Al Hara」の共同設立者、エリアス・アナスタスが「検閲」されるに至った「意思決定プロセスの完全なる透明性」を求めている。というのも、2023年6月にアナスタスは同館から生配信された公演に招待されたが、イベントのサウンドチェック中に「パレスチナの自由について長々と話すことは避けるように」と、メッセージで警告を受けことが報じられたのだ。これを受けバービカン・センターは「編集上の注意書き」だと説明し、謝罪している。

抗議団体はまた、「検閲の脅威がなく、文化的抹殺の試みに対抗できる」場をパレスチナのアーティストや作家のために提供するよう訴えた。

バービカン・センターの広報担当者はARTnews US版の取材に対し、「私たちは、人々が自らの意見を表明し、平和的に抗議する権利の行使を尊重します」と述べている。(翻訳:編集部)

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