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キム・カーダシアンをドナルド・ジャッド財団が提訴。偽物の家具をジャッド作と流布?

キム・カーダシアンが自身のオフィスを紹介するYouTube動画の中で、ミニマル・アートの先駆者、故ドナルド・ジャッド(1928-1994)が制作したと話したダイニングセットは本物ではないとして、3月27日、ドナルド・ジャッド財団はキム・カーダシアンと家具の製造会社を訴えた。

キム・カーダシアン。Photo: Taykor HillI/Getty Images

キム・カーダシアンは2022年、自身の会社「Skkn by Kim」のオフィスを案内するYouTube動画の中で、キッチンにあるダイニングセットを「ドナルド・ジャッド・テーブル」と紹介し、「ジャッドはシンプルなフォルムの天才として称賛されているアーティストで、椅子はテーブルに完全に溶け込んでいる」と語っていた。

確かにダイニングセットは一見すると、ジャッドのラ・マンサナ・テーブル22チェア84のようにも見える。しかし、ドナルド・ジャッド財団はこれらは本物ではないと主張し、この動画投稿の3日後にカーダシアンに家具について問い合わせたという。法廷文書によると、カーダシアンの広報担当者は「財団にご迷惑をおかけして大変申し訳ありません」と述べ、「動画のキャプションを撤回更新します」と申し出たという。

しかし同財団はそれだけでは足りないとして、動画を削除し、家具を 「リサイクル」、つまり破棄し、カーダシアンが公式声明を出すことを要請。対するカーダシアンの代理人は、代案として、彼女が財団を支持するようなソーシャルメディアへの投稿をすることを提案した。しかし結局交渉は決裂し、3月27日、財団はカーダシアンに対して不正確な主張をしているとして提訴。同時に、このダイニングセットを製造したウェスト・ハリウッドのクレメンツ・デザイン社を商標権と著作権侵害で訴えた。

カリフォルニア州中部地区連邦地方裁判所に同財団が提出した文書には、「(動画を見た)消費者は、ドナルド・ジャッド財団がカーダシアンとつながりがある、もしくは提携している、あるいは後援もしくは支持していると考える可能性が高い。ジャッド財団は、購入したドナルド・ジャッドの家具をマーケティングやプロモーション目的で使用することを固く禁じています」と書かれている。

カーダシアンは27日、訴訟についてのコメントは控えたものの、動画を削除した。一方でクレメンツ・デザイン社は声明を発表し、同社の家具とジャッド作品との間には、使用される木材やフォルムなどの「明らかな重要な相違点」があり、この訴訟には「不意打ちを食らった」と主張した。同社によると、ジャッド財団とは友好的な解決を模索していたが、財団は「合理的な条件での和解を望んでいなかった」としている。同社はさらに、「これらの主張にはまったくメリットがない」と付け加えた。

それに対して財団側は、クレメンツ・デザイン社からの請求書には「ドナルド・ジャッド風」と記載され、財団が所有する本物のダイニングセットの画像が添付されていたことを指摘した。

同財団の代理人である弁護士のミーガン・バニガンはニューヨーク・タイムズ紙の取材に対して、次のように語った

「カーダシアンのダイニングセットは本物よりも低品質です。彼女が行っていることは尊敬していますが、私たちはこの件には関わりたくないのです」(翻訳:編集部)

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