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  • 2024.04.01

ダビデ像の局部をグッズ化するのは違法? 「作品への敬意がない」として製造販売元を美術館が提訴

イタリア・フィレンツェでは、ダビデ像の局部だけに焦点を当てた土産物が地域のギフトショップで多数販売されている。これが作品の意味を傷つける恐れから、ダビデ像を所蔵するアカデミア美術館の学芸員たちは、土産物の製造販売元を相手に2017年から訴訟を繰り返し起こしている。

Photo: In Pictures Ltd./Corbis via Getty Images

1504年にミケランジェロによって制作され、イタリアのルネサンス時代を象徴する作品の一つであるダビデ像。作品を所蔵するアカデミア美術館があるイタリア・フィレンツェでは、この傑作をモチーフにしたグッズが多く販売されている。ところが、その多くが像の性器や臀部だけにフィーチャーしたデザインであることにより、本来作品に含まれる宗教的、あるいは政治的な意味が損なわれてしまうことを恐れる同館と地域の土産物屋との間に深刻な軋轢が生まれているようだ。

アカデミア美術館の館長を務めるセシリエ・ホルバーグは、ダビデ像の性器に焦点を当てたTシャツやマグネット、キーホルダーといったグッズを作品に対する侮辱や無許可の商業利用のひとつと見なしており、こうした商品の製造中止を業者に求めている。

ホルバーグによると、アカデミア美術館は2017年から、ダビデ像を「貶める」描写を施したギフトショップやメーカー側を提訴しており、多額の損害賠償金を受け取っているという。こうした訴訟は土産物店やメーカーだけに対して起こされているわけではない。アカデミア美術館は2023年、ダビデ像の頭部をモデルの顔と置き換えた『GQ』イタリア版を、ダビデ像の画像の権利をもつアカデミア美術館に画像の使用料を支払っておらず、画像が雑誌の表紙に「不当に」使われたとしてフィレンツェの民事裁判所に訴え、勝訴している。こうした訴訟ついてホルバーグは次のようにAP通信に語る

「私たちが収めたこの勝利を受けて、同様の悩みを抱える機関などから、私たちがどのようにして勝訴したのか、どのような手続きを踏めばいいのかといったアドバイスを求める質問や問い合わせが寄せられています」

アカデミア美術館のこうした取り組みによって、レオナルド・ダ・ヴィンチの《ウィトルウィウス的人体図》や、サンドロ・ボッティチェッリの《ヴィーナスの誕生》といった作品を法的に保護する動きが活発化しているという。ホルバーグはAP通信にこう語っている

「ダビデ像は、その美しさや純粋さ、作品の内側に含まれる意味や象徴してきた物事によって、何世紀にもわたって賞賛されてきた作品です。それを、プラスチックで作られた悪趣味な商品に落とし込む無知な人の多さと、作品への敬意のなさに悲しみを隠せません」(翻訳:編集部)

from ARTnews

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