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アメリカの美術館がモネの希少な絵画を売却へ。オークションでの予想落札価格は38億円

カンザスシティのネルソン・アトキンス美術館が、約40年所蔵してきたクロード・モネの作品を2024年5月に行われるクリスティーズオークションに出品することが明らかになった。

モネ《Moulin de Limetz 》(1888)Photo: Courtesy Christie's

5月のクリスティーズ・ニューヨーク「20世紀イブニング・オークション」に出品されるクロード・モネ《Moulin de Limetz》(1888)はモネが連作を制作するようになった初期の作品で、ジヴェルニー近郊の穀物工場を描いた2枚のうちの1枚だ。1890年に印象派作品の第一人者であった画商ポール・デュラン=リュエルがモネから譲り受け、コレクターのルシアン・ソーパールの手に渡った。数十年後、デュラン=リュエルはM.クノードラー社とともにこの絵を買い戻し、1941年にカンザスシティのコレクター、ジョセフ・S、エセル・B.エイサ夫妻に売却された。

夫妻の死後、1986年にネルソン・アトキンス美術館に作品の3分の2の所有権が寄贈され、2008年からは同館で展示されている。絵画の3分の1の所有権は夫妻の娘のエセリン・エイサ・チェイスに移っていたが、彼女が2023年9月に他界したことで、遺族はその持ち分を売却したいと考え、美術館とともにオークションに出品することで合意に達した

《Moulin de Limetz》の予想落札額は1800万ドルから2500万ドル(約27億円~約38億円)だ。姉妹作が2023年秋にサザビーズに出品されており、予想落札額の最高額1800万ドルに対して、700万ドル以上上回る2560万ドル(現在の為替で約38億8000万円)で落札されている。

クリスティーズは、《Moulin de Limetz》を「モネのキャリア後期を特徴づけることになるシリーズへのプロローグ」と称した。また、クリスティーズの20世紀イブニング・セールスの共同責任者であるイモージェン・カーはUS版ARTnewsの取材に対して、「ここ数シーズン、モネの作品に強い関心が寄せられています。そして、このような上質で希少な作例は、過去にも非常に優れた実績があることから、この機会はコレクターが大いに期待するでしょう。モネの優れた作品には普遍的な魅力があり、私たちは《Moulin de Limetz》が世界中で大きな関心を呼ぶことを期待しています」と語った。

しかし、《Moulin de Limetz》の落札額は、2019年にサザビーズで達成されたモネのオークション記録、1億1070万ドル(現在の為替で約167億8000万円)には及ばないだろう。だが、今年は印象派の誕生150周年であり、第1回印象派展が開催された4月15日まであと2週間と迫っているために関心を集めるかもしれない。

美術館が所蔵する美術品を売却する「ディアクセッション」は以前から行われてきたが、近年、このプロセスに関するガイドラインが緩和されたため活発化し、議論を呼んでいる。《Moulin de Limetz》は、最近のディアクセッションの中で最も注目されている作品だろう。

ネルソン・アトキンス美術館の発表によると、今回の収益で「ジョセフ・S・アンド・エセル・B・エイサ美術購入基金を設立し、将来の美術品購入に役立てる」という。(翻訳:編集部)

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