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  • 2024.06.07

今週末に見たいアートイベントTOP5: 奈良美智ら5作家の作品から考えるパレスチナのいま、三島喜美代70年の軌跡を約90点で振り返る

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

「三島喜美代―未来への記憶」(練馬区立美術館)より、三島喜美代《バナナボックス》2007年 陶、転写、彩色 岐阜県現代陶芸美術館

1. 「MAMリサーチ010: 1980~1990年代、台湾ビデオ・アートの黎明期(展覧会編)」(森美術館)

カク・イフン(グオ・イーフェン/郭挹芬)、ロ・メトク(ルー・ミンドー/盧明德) 《サイレント・ボディー》 1987年 パフォーマンス、5チャンネル・ビデオ(白黒、サイレント)、ブラウン管モニター、枝、白い布 サイズ可変 展示風景:「実験芸術:アクション・スペース」台北市立美術館、1987年

パイオニアたちの活動から紐解く台湾ビデオアートの歴史

2015年から続く森美術館のプログラム「MAMリサーチ」は、社会的、政治・経済的にも複層的な背景から生まれてきたアジアの現代アートについて考察し、その歴史的文脈を明らかにしていこうとする試みだ。

第10回となる本展では、1980〜1990年代に当時最新技術だったビデオを使用し美術作品を制作した台湾のパイオニアたちの活動に注目。2015年に台北の関渡美術館で開催された大規模な展覧会「啓視録:台湾のビデオ・アート1983-1999」展のエッセンスを凝縮し「MAMスクリーン019:1980〜1990年代、台湾ビデオ・アートの黎明期(上映編)」と「MAMリサーチ010:1980〜1990年代、台湾ビデオ・アートの黎明期(展覧会編)」の2部に分けて紹介する。この時代の実験的な試みや新しい表現の追求、映像などメディアについての思想や、台湾の作家と日本との関係を紐解く。

「MAMリサーチ010: 1980~1990年代、台湾ビデオ・アートの黎明期(展覧会編)」
会期:2024年4月24日(水)~ 9月1日(日)
会場:森美術館(東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53F)
時間:10:00 ~ 22:00(火曜のみ17:00まで、8月13日は22:00まで。入場は30分前まで)
休館日:無休

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2. 「アウト・オブ・民藝|『民』から芋づる編 MINGEIのB面!」(世田谷文化生活情報センター 生活工房)

展示風景 写真:高見知香

「民」と「民藝」を紐解くリサーチの集大成

「民藝(民衆的工藝)」という言葉は、1925年に柳宗悦らが生み出した。デザイナーの軸原ヨウスケと美術家の中村裕太は、その「民藝」の周辺をめぐり、運動発足当時に起きていたさまざまな工芸運動、それらにまつわる人、物、出版社などのネットワークを対象にリサーチ活動を行う「アウト・オブ・民藝」を展開してきた。本展では軸原と中村が、柳らが夢中になって民芸品を蒐集していた黎明期の民藝運動と、今日のライフスタイルとしての「MINGEI」との食い合わせを「民」という文字からひも解いていく。

会場には、主に1910年代から40年代の新聞や雑誌などの出版物の展示をはじめ、柳らの日記や書簡などを時間軸に沿わせた「アウト・オブ・民藝の芋蔓年表」が展開する。そうした「民」にまつわる文献や物品をたどることで、「民藝」の持つ多様な面を掘り起こす。

「アウト・オブ・民藝 |『民』から芋づる編 MINGEIのB面!」
会期:4月29日(月)~ 8月25日(日)
会場:生活工房ギャラリー(東京都世田谷区太子堂4-1-1 キャロットタワー3F)
時間:9:00 ~21:00
休館日:月曜(月曜が祝日の場合は開館)


3. If I must die, you must live(WAKO WORKS OF ART 六本木)

Henk Visch Que sais-je? (Montaigne) 2023, bronze, h 27 cm

奈良美智の新作も。ガザに思いを巡らす作品が集結

オランダ出身のアーティスト、ヘンク・フィシュがキュレーションをした、パレスチナ出身の詩人や画家の作品にフォーカスした展覧会。タイトル「If I must die, you must live(もし私が死ななければならないなら、あなたは生きなければならない)」はパレスチナの詩人リフアト・アルアライールの詩の冒頭部分だ。彼は2023年11月にこの詩をSNSに投稿し、その翌月にイスラエル軍の空爆により命を落とした。アルアライールが残した詩は、本展全体を通底するメッセージとなっている。

本展はフィシュの新作を含む彫刻作品やドローイングのほかに、ガザ地区の難民キャンプで生まれ育ったムスアブ・アブートーハの詩、長年パレスチナの美術界を牽引してきた画家のひとりであるスライマーン・マンスールのエディション作品、ガザのためにアーティストたちが制作したポスターを中心に構成される。長年フィシュと親交があり、企画に賛同した奈良美智の新作も展示されている。世代の異なる作家たちの想いや言葉が響き合うことで、現在もなお苛酷な状況下にあるパレスチナの人々に思いを巡らすきっかけとなるだろう。

If I must die, you must live
会期:5月17日 ~ 6月29日
会場:WAKO WORKS OF ART(東京都港区六本木 6-6-9)
時間:12:00 ~18:00
休館日:日月祝


4. 「三島喜美代―未来への記憶」(練馬区立美術館)

三島喜美代 《20世紀の記憶》(部分) 1984-2013年 耐火レンガに印刷 個人蔵 写真撮影:小川重雄 写真提供:美術資料センター株式会社

三島喜美代の魅力と実像に迫る大回顧展

三島喜美代の70年にわたる創作の軌跡を、主要作品を通して概観する回顧展であり、東京の美術館で開催される初の個展。三島は大量消費社会や情報化社会へ厳しい視線を投げかけながら情報やゴミを造形表現へと転化させ、日々の暮らしの中で遊び心をもって作品を生み出してきた。

本展では初期の油彩や、新聞、雑誌などをコラージュした前衛的な絵画から、陶にシルクスクリーンで印刷物を転写した多様な立体作品、大型インスタレーション、産業廃棄物を素材に取り込んだ近作まで約90点の作品が展示されている。

見どころは三島の代表作にして最大規模のインスタレーション作品《20世紀の記憶》。床におよそ1万個の中古の耐火レンガを敷き詰め、表面に20世紀の100年間の新聞記事を転写した作品を、フルスケールで展観する。三島が作品に刻印した20世紀の記憶を、来るべき未来への記憶として改めて受け止めたい。

「三島喜美代―未来への記憶」
会期:5月19日(日)~7月7日(日)
会場:練馬区立美術館(東京都練馬区貫井1-36-16)
時間:10:00 ~18:00(入場は30分前まで)
休館日:月曜


5. WHAT CAFE EXHIBITION vol.36(WHAT CAFE)

JILL STUARTと生み出すアートとアパレルの融合

さまざまな人や企業の「アートとは」を見つめ直し、新たな発見を生み出す空間を目指すWHAT CAFEのシリーズ企画。今回は「今日よりも華やかな明日のために」をブランドパーパスに掲げるJILL STUART協力のもと、アートとアパレルを融合させた展示を繰り広げる。2023年11月の第1弾に引き続いての開催だ。

本展では「刹那的な時間や情景」をモチーフとした絵画作品を制作している御村紗也と、断片的なロゴや都市の風景、日常生活の事物などを抽象的に再構築した絵画作品で知られる仲衿香が、JILL STUARTとコラボレーション。共同開発したオリジナルアイテム計6点を販売する。また、JILL STUARTの2024シーズンコンセプトである「Multifaceted gem」を再解釈した14人の若手アーティストによる作品の展示販売も行われる。会場では「耳で聴く美術館avi」がナビゲートする音声ガイドも無料公開する。

WHAT CAFE EXHIBITION vol.36
会期:6月5日(水) ~ 6月16日(日)
会場:WHAT CAFE(東京都品川区東品川2-1-11)
時間:11:00 ~18:00(16日は17:00まで)
休館日:無休

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