ルーチョ・フォンタナの傑作がオークションに! 予想落札額は史上最高額を超える45億円
シンディ&ハワード・ラコフスキー夫妻が20年に渡って所有してきたルーチョ・フォンタナ(1899-1968)の傑作《Consetto spaziale, La fine di Dio》(1964)が、2024年5月にサザビーズ・ニューヨークに出品されることが決まった。
空間主義(spazialismo)運動の創始者として知られるルーチョ・フォンタナは、1949年よりキャンバスに切れ目や穴を開けることで空間を表現した絵画の制作を開始。1951年からはネオン・ライトやブラック・ライトを天井につるすなどの実験的な作品を発表した。そして、1950年代以降の「アンフォルメル」、日本の「具体美術協会」や1967年頃からイタリアに興った「アルテ・ポーヴェラ」などの前衛芸術運動に様々な影響を与えた。
サザビーズに出品されるフォンタナの《Consetto spaziale, La fine di Dio》(1964)は、代表的なシリーズ「Concetto」のひとつで、鮮やかなカドミウム・イエローに無数の穴を開けた4点の連作のうちの1点。かつて2015年に、そのうちの1点がクリスティーズに出品され、フォンタナの最高額である2920万ドル(現在の為替で約44億300万円)を記録した。
連作の中でも、《Consetto spaziale, La fine di Dio》(1964)は特に傑作と言われている。2019年のMETのフォンタナ回顧展では目玉作品として扱われており、サザビーズも、「その穿刺の全体的な密度の高さが際立っており、周囲に厚い層が積み重なることで、視覚的なドラマと高められた強度で炙り出される構図を生み出している」と評した。今回の予想落札額は2000万ドルから3000万ドル(約30億3400万円〜45億4500万円)と、オークションに出品されたフォンタナの作品の中で最も高額であるだけでなく、史上最高額を塗り替える可能性もある。
ラコフスキー夫妻は2003年、サザビーズ・ロンドンで、《Consetto spaziale, La fine di Dio》(1964)を当時、フォンタナのオークションでの最高額となる230万ドル(当時の為替で約3億5000万円)で購入した。まだ世界的に知名度を獲得していないジャンルを中心に、国際的なコレクションを築きたいと考えていた夫婦にとって、この作品の購入は画期的な出来事だった。
今回の売却は、ダラス美術館にとっては痛手といえるだろう。というのも、ラショフスキー夫妻は、ダラスを拠点とする同じパワー・コレクターのホフマン・ファミリーやローズ・ファミリーとともに、コレクションの全財産を寄付することを2005年に誓約したのだ。ただし、コレクションが長期にわたって自分たちのビジョンに沿ったものであるために、作品を購入し、適切と思われるときに売却することができるという条件を夫婦は設けている。しかし、ダラス美術館で2007年に開催された、これらコレクターたちの所蔵品を展示した「ファスト・フォワード」展のカタログには、この作品が「取り消し不能な贈与」と定義されていた。これについてサザビーズは、「ラショフスキー夫妻はすでに5000万ドル(約75億9000万円)以上の美術品を美術館に寄贈しています。今回の売却により、彼らは今後も重要な作品の購入を続け、ダラス美術館のためになるような形でコレクションをさらに進化させることができるでしょう」とコメントした。
《Consetto spaziale, La fine di Dio》(1964)は、ミラノとニューヨークで展示された後、5月15日に開催されるサザビーズ・ニューヨークのコンテンポラリー・イブニング・オークションに出品される。(翻訳:編集部)
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