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リチャード・セラの超巨大彫刻がパリに再び!? 「市の歴史的中心部」での再設置を検討

パリ市が倉庫に保管するリチャード・セラの巨大な彫刻《CLara-Clara》の再設置を求める動きが、2024年3月26日のセラの死をきっかけに活発化している。同市の文化担当も動き出した。

2008年、パリのチュイルリー公園に展示されたリチャード・セラ《CLara-Clara》。Photo: Gamma-Rapho ViaI Getty Images

リチャード・セラは、1983年にパリポンピドゥー・センターで開催された回顧展のために《CLara-Clara》を制作した。この作品は、C型に湾曲した長さ約35メートル、高さ約3メートルの2つの鋼鉄の曲線部分を向かい合わせに配置し、その間を鑑賞者が通り抜けられるようになっている。

一つ問題があるとしたら、総重量が約97トンにもなることだった。そのため展覧会の主催者は屋内に設置することを断念し、ポンピドゥーから離れた場所にあるチュイルリー庭園に設置することに。そして回顧展から2年後の1985年、パリ市は《CLara-Clara》を取得し、13区の小規模なショワジー公園に移設した。

しかしパリの中でも庶民的な13区に設置された《CLara-Clara》は落書きで汚され、スポーツの道具のように使われたため、鋼鉄の表面には多数の傷が付いてしまった。これにセラは深く落胆し、パリ当局は1993年にこの作品を撤去して、今度は人目につかない場所に保管した。

《CLara-Clara》が再び人々の目に触れたのは、それから15年後の2008年だった。パリのグラン・パレで開催された現代美術展、第2回「モニュメンタ」の一環として、再びチュイルリー庭園に設置されたのだ。 同展でセラは、グラン・パレの館内に設置するために《Promenande》も制作している。 この機会に、この巨大な《CLara-Clara》をパリのどこに設置するかという議論が再燃したが、同年5月、セラはニューヨーク・タイムズ紙に、展覧会終了後にパリの当局がこの作品をどうするかはわからないと答えている。

その後、《CLara-Clara》がどこに保管されているのかを知る人は多くなかったが、2024年4月2日にHyperallergicが報じたところによると、この作品はモニュメンタ後の2010年以来、2万3000点を超えるパリ市の美術コレクションを管理し、修復を監督している市立現代美術財団(FMAC)の管轄下に置かれてきたという。発見したのは、《CLara-Clara》を研究していたコロンビア大学のミッシェル・ヤング教授で、パリ南東部のイヴリー・シュル・セーヌにある旧水力発電所跡の貯蔵庫に保管されていることを突き止めたのだ。

2024年3月27日、パリ市の右派反対グループ「Groupe Changer Paris」のメンバー、オーレリアン・ヴェロンはX(旧ツイッター)で、パリ市内の美術館を監督するパリ文化担当のカリーヌ・ロラン副市長に対して、「《CLara-Clara》は数百万ユーロの価値があり、かつ歴史的価値の高い大作です。このような彫刻を保存し続けることに、どのような未来があるのでしょうか?」と呼びかけ、この作品を公共の場に再設置するよう求めた。

フランスのル・モンド紙によると、市側は正式な声明を出していないものの、ロランの側近は、「パリの歴史的中心部」に作品を再設置するため、現在、3つの候補地を検討していると語ったという。(翻訳:編集部)

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