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フランク・アウアバッハ展がヴェネチア・ビエンナーレに合わせて開催決定! 個人所有の貴重な絵画11点を展示予定

フランシス・ベーコンやルシアン・フロイドなどとともにスクール・オブ・ロンドン派を代表する画家として知られるフランク・アウアバッハの貴重な作品が、ビエンナーレ開催中のヴェニスで発表される。

Frank Auerbach《Reclining Head of Julia III》(1993)Photo: Pierre Le Hors, Courtesy of the Artist

ドイツ系イギリス人の画家、フランク・アウアーバッハが1986年のヴェネチア・ビエンナーレでイギリス代表として金獅子賞を受賞して以来初めて、彼の50年以上にわたる画業を代表する作品の数々がヴェネチアで展示されることが決定した。この展覧会はヴェネチアの歴史的建造物、パラッツォ・ダ・モストを舞台に、アートディーラーでキュレーターのマックス・レヴァイが企画するもので、第59回ヴェネチア・ビエンナーレに合わせて2024年4月18日から6月28日まで開催される。

本展で紹介されるのは、アウアーバッハが1969年から2016年の間に制作した11点の油彩画。これらは全て個人所有であるため、公開される機会の極めて少ない貴重な作品群だ。また、アウアーバッハ作品にお馴染みの画題、たとえばロンドンのカムデンタウンの風景や、彼がアートスクールで出会った友人で、その後20年間にわたって毎週2回、彼のモデルを務めたジュリア・ヤードリー・ブリッグズ・ミルズを含む、彼が最も心を許し、信頼した被写体を描いた作品であるという点でも共通している。

またこの展示に合わせて、ピューリッツァー賞受賞作家で文芸評論家のヒルトン・アルスが、イギリス出身の詩人でのちにアメリカに移住したウィスタン・ヒュー・オーデンの文脈にアウアーバッハを重ねたエッセイを寄稿する。アウアーバッハと同様、オーデンもまた、ロンドンとそこに住む人々の無形性を記録し、現代的でありながら過去との強い結びつきを持つこの都市に生命を吹き込んだ。

さらに建築家で歴史家でもあるフランチェスコ・ダ・モストは、後にリアルト橋を設計することになる建築家、アントニオ・ポンテによって15世紀に建てられたパラッツォ・ダ・モストについてのエッセイを執筆する。

レヴァイは本展についてこう説明する。

「これまでパラッツォは、4世代に渡ってヴェネチアのある一族が所有してきたため、一般に公開されることはほとんどありませんでした。この建造物の持つ重層的な歴史は、アウアーバッハ作品──完成されたものだけでなくその非常に厳格な制作プロセスも含めて──にも共通しています」

レヴァイによれば、展覧会タイトル「Frank Auerbach: Starting Again(フランク・アウアーバッハ:再出発)」はアウアーバッハ特有の制作プロセスを表しているという。

「アウアーバッハの実践において非常に特徴的なのが、彼はたった5〜6のオブジェクトを繰り返し描き続けてきたということがあります。彼の作品自体は必ずしも古典的ではないものの、被写体として彼のために座ることは非常に大変な行為です。というのもアウアーバッハは、描く過程で被写体が作品の進展を期待する頃になると、必ずと言っていいほどパレットナイフを使ってこれまでに描いたものを全て消して、最初からやり直すのです」

この展覧会を手がけることは、かつてアウアーバッハも所属したギャラリー、マールボロの社長を務めたレヴァイにとって特に感慨深いだろう。というのも、アウアーバッハ、フランシス・ベーコンヘンリー・ムーアルシアン・フロイドなど、スクール・オブ・ロンドン派のアーティストたちのキャリアを後押ししてきた同ギャラリーは、近年の財政難を理由に先週、その80年の歴史に幕を閉じると発表していた。

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