世界的アーティストへの登竜門、2024年度グッゲンハイム・フェローシップが決定!
世界で最も権威のある賞のひとつであるグッゲンハイム・フェローシップの2024年度受賞者188人が発表された。その中には、ニコラス・ガラニン、ダイアニ・ホワイト・ホークなど50人のアーティストが含まれている。
のちのノーベル賞やピューリッツァー賞などの受賞者を数多く輩出していることでも知られる名門グッゲンハイム・フェローシップは、ジョン・サイモン・グッゲンハイム上院議員が、若き有望な学者でありながら17歳で亡くなった息子を偲んで1925年に創設した。同フェローシップは52の分野(自然科学、社会科学、人文科学、創造芸術の4つの包括的なカテゴリーに分けられる)で活躍しているアメリカ、カナダ、ラテンアメリカ、カリブ海地域の市民または永住者を対象にしており、受賞者には助成金が贈られる。これまでネイチャー・ライターのレイチェル・カーソンや、著作家で公民権運動家のジェームズ・ボールドウィン、舞踏家のマーサ・グラハム、ノーベル平和賞を受けた生化学者、ライナス・ポーリングなど、名だたる人物がこの賞に輝いている。
今年は約3000人の応募があり、188人が選出された。プレスリリースによると、今年フェローシップに選ばれたプロジェクトの多くは、「民主主義と政治、アイデンティティ、障がい者活動、機械学習、投獄、気候変動、地域社会」など、今日的な問題に直接応答しているものだという。
それは、今年のアート部門を受賞したアーティストたちにも共通する。例えば、ジェシカ・エレイン・ブリンクホーンは学際的なアーティストであり、障がい者、高齢者、LGBTQ+のコミュニティの擁護者でもある。ブリンクホーンの次のプロジェクトは、アートを通して「障がいとセクシュアリティに対する既成概念」を再評価するもの。また、エイダ・トリロは、アメリカにやってきたLGBTQ+移民のストーリーを写真で記録している。そのほか、アラスカとカナダの先住民族トリンギットとウナンガックスのアーティストであるニコラス・ガラニンは、先住民のアートについてより大きな言説を生み出すためのワークショップや新しいアート作品を制作している。アメリカ先住民族をルーツに持つダイアニ・ホワイト・ホークは、祖先の土着的な様式や媒体を大胆に取り入れた作品が評価され、昨年マッカーサー天才賞を受賞した。
同フェローには意外な人物も参加している。俳優のロバート・デ・ニーロは、実父で1968年にフェローに選ばれ、2019年までフェローシップを支援し続けた画家のロバート・デ・ニーロ・シニアの意志を引き継ぐ形で、2023年からフェローの支援を行っている。今年は、色彩豊かな絵画と歴史的事実の深い調査と参照を通して、人種と政治的アイデンティティを探求しているアーティスト、アービー・スミスを選出した。
創設以来、ジョン・サイモン・グッゲンハイム記念財団は4億ドル(約614億7000万円)を超える奨学金を1万9000人以上に授与してきた。同財団のウェブサイトによると、フェローシップに対する助成金の額は受賞者の研究ジャンルや計画によって決めるため、「どのプロジェクトにも全額を助成することを保証するものではない」という。ただ、例年3万から4万5000ドル(約461万円~691万円)が授与されている。
同フェローの受賞経験がある詩人で、グッゲンハイム記念財団の会長のエドワード・ハーシュはプレスリリースの中で、同フェローシップについてこう語っている。
「人類は今、存在に関わる深刻な課題に直面しています。グッゲンハイム・フェローシップは人生を変えるものです。同フェローシップは、これらの課題に真正面から取り組み、より広い文化に新たな可能性と道筋を生み出している著名な芸術家、学者、科学者、作家、その他の文化的先見者たちの人生とキャリアに対する、称賛に値する投資なのです」
その他の受賞者はこちら。(翻訳:編集部)
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