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  • 2024.04.17

美術品を助け出せ!歴史的建造物の大火災で軍と市民が力を合わせた救出劇に賞賛

デンマーク・コペンハーゲンにある17世紀の建築物、旧証券取引所で4月16日に火事があり、屋根と尖塔が焼け落ちた。この建築物には貴重な芸術作品が多数あったため、陸軍や居合わせた市民が加わっての必死の救出劇が繰り広げられた。

2024年4月16日、デンマークの旧証券取引所で発生した火災の様子。Photo: Pinar Lauridsen/Anadolu via Getty Images

コペンハーゲンにある旧証券取引所、通称「ブルス」はクリスチャン4世の命により、1619年から1640年にかけて建設され、1974年まで証券取引所として使われていた。ブルスの大きな特徴は、4体のドラゴンと3つの王冠が絡み合った約56メートルの尖塔だ。ドラゴンは、証券取引所を火災などの敵から守る象徴と考えられており、王冠はデンマーク、ノルウェー、スウェーデンの北欧3王国を象徴している。

2020年、改装工事前の旧証券取引所。Photo: Wikimedia Commons

ガーディアン紙が報じたところによると、ブルスは改修工事中で、建物の周囲には足場が組まれていた。4月16日の午前7時30分ごろに、火災が起こったと市の消防署に通報があった。消防によれば、足場が消火を困難なものにし、屋根の銅板が熱を閉じ込めてしまったため、近付くのがしばらく危険な状態だったという。近隣にある国会議事堂、クリスチャンスボー宮殿や省庁の人々は避難し、警察は幹線道路と市街地の一部を封鎖した。

およそ120人が消火活動にあたったが、屋根の一部が崩れ落ち、火はすでに数階に燃え広がっている。鎮火率は40%程度で、消防士たちは少なくとも24時間は炎と闘うことになるだろうと予想している。

鎮まらない火災の状況に、クリスチャンスボー宮殿の隣のビルに入居している商工会議所は、X(旧ツイッター)に「ブルスが燃えている。我々は恐ろしい光景を目の当たりにしている。皆さんは近づかないようにしてほしい」と投稿した。

今回の火災で、人々が心配したのは美術品だ。ブルスにはデンマークで最も貴重な美術コレクションが所蔵されていた。改修工事に先立ち、作品の多くは移送されていたが、19世紀のデンマーク系ノルウェー人画家、ペーダー・セヴェリン・クローヤーの代表作である、取引所ホールに集まった燕尾服の男性たちを描いた《From the Copenhagen Stock Exchange》(1895)などが残されていた。地元メディアによれば、陸軍のロイヤル・ライフ・ガードの隊員約90人がバリケードを築いて美術品などの貴重品の確保を進めたが、居合わせた商工会議所の会頭や、デンマーク国立公文書館の職員25人らも作業を手伝い、美術品は国会議事堂とデンマーク国立公文書館に運ばれた。

デンマークのヤコブ・エンゲル=シュミット文化相はそれらの救出劇について、「ブルスのスタッフ、隊員、そして通りすがりのコペンハーゲン市民が、燃え盛る建物から芸術の宝を救っているのを見て感動した」とXに投稿した

ブルスの火災の原因はまだ分かっていない。この近辺で歴史的建造物が焼失するケースは初めてではなく、クリスチャンスボー宮殿は何度か全焼しており、最近では1990年に国会議事堂の別館が焼失した。(翻訳:編集部)

from ARTnews

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