病欠者の抜き打ち訪問、給与の返済要求etc. バチカン美術館の劣悪すぎる労働環境が明るみに
労働条件の改善と賃金問題の解決を求める団体請願書に署名したのは、バチカン美術館の職員700人のうち49人だ。コリエレ・デラ・セラ紙が報じたところによると、その大多数は管理職であり、同館の雇用者は、「労働者一人ひとりの尊厳と健康を損なう」労働規則の中で「物」のように扱われていると主張している。
請願書には、同館の劣悪な労働環境が具体的に綴られている。例えば職員が病欠した場合、本当に病気で休んでいるかを確認するために職員が抜き打ちで訪れるので、丸一日家にいなければならない。また、年功序列を含めた昇進の基準もなく、「従業員はチーフマネージャーの独断で評価され、絶対的な差別が支配している」状況だという。さらに雇用保険もない。そのために新型コロナウイルスのパンデミック時に自宅待機を余儀なくされた従業員に対して、その期間中に支払われた給与の一部を返済するよう求められたという。
この請願書は数日前に、同館の上の組織にあたるバチカン行政庁の総督府の総裁、フェルナンド・ベルゲス・アルサガ枢機卿に提出された。行政庁側は30日以内に申し立てに回答する必要がある。もしその期間内に解決されない場合は、バチカンの労働事務所に申し立てを行い、調停による和解を求めることになる。同館職員には労働組合の結成を許可されていないため、バチカンの労働局にはこの件を審理する義務はない。
職員の代理人を務めるローラ・スクロ弁護士はマスコミに対し、バチカン側との調停手続きに入る場合には、他の職員も今回の申し立てに参加するだろうと語った。そしてスクロは「調停がうまくいかない場合は、裁判で争うことになります」と付け加えた。
スクロはまた、欧州人権裁判所に提訴する可能性も示唆した。カトリック教会の実質的な中央官僚機構であるローマ教皇庁は現在、人権裁判所のメンバーでもなく、欧州人権条約の加盟国でもない。しかし、2009年には欧州連合(EU)の通貨条約に署名し、欧州人権法を支持する意思を示している。
バチカン美術館は、バチカンにとって重要な収入源だ。しかし、新型コロナウイルスのパンデミックによる財政的打撃からまだ立ち直れておらず、2024年初めには入場料を17ユーロ(約2870円)から20ユーロ(約3300円)に値上げした。(翻訳:編集部)
from ARTnews