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  • 2024.05.17

「スペインのストーンヘンジ」が水底から姿を現す。異常干ばつで古代都市から中世のボードゲームまで続々出土

スペイン西部のカセレス県で、2019年以来の深刻な干ばつにより水位が低下した複数の貯水地から数々の遺跡・遺物が発見された。その中には「スペインのストーンヘンジ」と言われる大規模なドルメンも含まれている。

満水時の27%まで干上がったスペイン・カセレス県のバルデカニャス貯水池に出現したグアダルペラルのドルメン(2022年7月28日撮影)。Photo: Pablo Blazquez Dominguez/Getty Images

5月15日にスペインエル・パイス紙が伝えたところによると、カセレス県にあるバルデカニャス貯水池での考古学的発見に関する報告書をスペイン文化省が発表した。研究者チームは、1957年の貯水地建設で水没した文化財の93%の発掘調査を終えたとされる。

調査で明らかになったのは、ドルメンを形成する巨石群や古代ローマの都市アウグストブリガ、ローマの支配以前にイベリア半島に居住していたケルト系のウェトネス族による3基の豚の石像、金石併用時代(銅器時代)の埋葬地、ローマ時代の祭壇、中世のコインやボードゲームなど、さまざまな時代の遺跡・遺物の存在だ。

2019年9月、スペイン文化遺産研究所(IPCE)は、バルデカニャス貯水池でグアダルペラルのドルメンが出現したとの知らせを受け取った。「スペインのストーンヘンジ」とも言われるこのドルメンは、140におよぶ板状の花崗岩で直径5メートル弱の埋葬室と長さ約10メートル、幅約1.5メートルの回廊を形成し、円形に配置された珪岩に囲まれている。

2021年には、紀元前5千年紀から3千年紀の間のものと見られる100以上の遺物が収集された。発見された地域は、ローマ時代にオリーブオイルの生産に特化した農村集落になったと考えられている。

中世後期のアラスラ修道院では、アルフォンソ10世(在位1252-1284年)の時代に鋳造されたコインや修道院の前に建てられた壁跡が見つかった。サントス・マルティレス教会の壁にはラテン語の追悼碑文があり、「パピリア族のマルコの息子、エメリテンセ(メリダ出身の意)のマルコ・ヴィリウスがここに眠る」と書かれている。また、近隣のエル・ロンカデロ地区では、ローマ時代の石碑2基のほか、アルケルクと言われる中世のボードゲームが発見された。

さらに2021年、考古学的調査とドローンによる3次元測量によるアウグストブリガの都市計画の分析が行われ、古代都市の詳細な見取り図が作成されている。この地域では、切石を用いて建造した浴場内の腰掛けに彫られた聖なる男根像など、これまで知られていなかった遺物のほか、水道橋や下水道、広範な地域にわたる住居遺構の存在も確認された。都市の周囲からは、埋葬地などの建造物も発見されている。墓所跡には一部略奪された形跡があり、多数の人骨が残っていた。

アリハ城そばの貯水池の堤防沿いからはウェトネス族が作った豚の石像2基が、その近くでもオスとメス一対の豚をかたどったローマ時代以前の彫刻が見つかっている。後者は長さ約122cm、幅約66cm、重さは約670キロあり、この種の彫刻としては初めてメスの豚が確認された。

スペイン文化省文化・芸術局長のイザック・サストレ・デ・ディエゴは、2019年からの考古学調査の意義についてこう語っている。

「2つの意味で成果が上がったと言えます。1つは、水没していた遺産を保護するために共同戦略を取ったこと自体の価値。もう1つは、文化省をはじめとした行政や関係機関、現場関係者との4年間にわたる協力関係です。人類共通の財産である考古学遺産を、できる限り良好な状態で保存するという目的の下に団結することができました」

出土した遺物の大半は、今後カセレス博物館に送られて展示される予定。(翻訳:石井佳子)

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