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  • 2023.08.18

今週末に見たいアートイベントTOP5: 日仏作家7人が迫る「粘土」と「身体」の関係、サマソニ会場に50点の「SUN」が出現

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

渡辺篤(アイムヒア プロジェクト)《月はまた昇る》2021 年 展示風景:「同じ月を見た日」R16 studio、撮影:井上桂佑

1. エマイユと身体(からだ)(銀座メゾンエルメス フォーラム)

フランソワーズ・ペトロヴィッチ 《腹話術師》 | 2015 | 陶土、釉薬 Courtesy of the artist and Semiose, Paris ©Kei Okano / Courtesy of Fondation d'entreprise Hermès

陶芸の「釉薬=エマイユ」に注目、国内外の7作家が多彩なアプローチ

陶磁器の表面を覆って、質感や色合いに個性をもたらす釉薬。そんなガラス質の「釉薬(エマイユ)」という素材に注目した陶芸作品のグループ展が開催されている。参加するのは、シルヴィ・オーヴレ、ジャン・ジレル、内藤アガーテ、ユースケ・オフハウズ、小川待子、フランソワーズ・ペトロヴィッチ、安永正臣の7人。日本やフランスなどにルーツを持つ彼らの作品を通して、「粘土と身体の関係」に迫っていく。

各作家のアプローチの仕方は、非常に多様でユニークだ。陶器と建築に強い関心を持つユースケ・オフハウズは、ミニチュアで再現した国内外の有名建築物たちを糸で吊るして宙に浮かせた。中銀カプセルタワービルなど、それと分からせながらもどこか形が曖昧なのは、建築物を現地で目に焼き付けて記憶だけを頼りに制作しているから。シルヴィ・オーヴレは、柄の部分が陶製の「ほうき」を壁面にずらりと並べる。柄はいびつな形をしており、毒々しくも見える絵付けと相まって、民俗資料的な雰囲気を漂わせる。

エマイユと身体(からだ)
会期:6月17日(土)~9月17日(日)
会場:銀座メゾンエルメス フォーラム(東京都中央区銀座5-4-1 8・9F)
時間:11:00 ~ 19:00  (入場は30分前まで)


2. スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わるすがた(国立西洋美術館)

ラモン・カザス《「アニス・デル・モノ」のポスター》 1898 年 カラー・リトグラフ 国立西洋美術館

ゴヤ、ピカソ、ミロ、ダリら巨匠たちの版画など約240点が集結

スペインのイメージ”と聞けば、すぐにフラメンコや闘牛、あるいはアルハンブラ宮殿やベラスケスなどが思い浮かぶのではないだろうか。そんなスペインも、歴史的には「ピレネーの向こうはアフリカである」と揶揄されるほど、他のヨーロッパ諸国にとっては馴染みの薄い国だったとか。今日あるイメージを広めたのは、19世紀にこの地を訪れた外国人旅行者たち。そして、大量に刷ることができて持ち運びがしやすかった版画が、イメージの形成や流通に大きな役割を果たしたという。

今展では、17世紀初頭から 20世紀後半までのスペイン版画に関わる歴史を展観。リベーラからゴヤピカソミロダリら巨匠たちの仕事のほか、ドラクロワマネなど19世紀の英仏で制作された“スペイン趣味”の作品が一堂に集結する。国立西洋美術館の収蔵品を中心に、国内約40カ所から集めたおよそ240点の版画や書籍、写真などで、スペインの魅力が発見されていく過程をたどる。9月1日(金)18:00~、展示企画者の研究員によるスライドトークを開催。

スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わるすがた
会期:7月4日(火)~9月3日(日)
会場:国立西洋美術館(東京都台東区上野公園7-7)
時間:9:30 ~ 17:30  (金・土曜は~20:00、入場は30分前まで)


3. 「あ、共感とかじゃなくて。」(東京都現代美術館)

渡辺篤(アイムヒア プロジェクト)《月はまた昇る》2021 年 展示風景:「同じ月を見た日」R16 studio、撮影:井上桂佑

「共感」しなくてもいい? 5作家が本展オリジナルのインスタレーションを展示

“他人の気持ちに寄り添う「共感」はいつでも大切なのか?”をテーマに、答えのない問いを考えることを提案する展覧会。共感は社会を円滑に回すためのスキルでもあり、人に悩みを共感してもらえば嬉しい一方で、安易に共感されると不快感を持つこともある。時には、共感「したくない」時も。本展では、有川滋男、山本麻紀子、渡辺篤(アイムヒア プロジェクト)、武田力、中島伽耶子が新作や展覧会テーマに合わせたインスタレーションを披露。「共感しないことは拒絶ではなく、新しい対話や思考の可能性を開く」ことを、考えていく。

有川滋男は、就職説明会を模したインスタレーションで架空の職業を紹介する。映像に映るなぞの“作業風景”や、展示ブースの“仕事道具”らしきものを見て職務内容を理解しようとしても、一向に「共感」できない。ひきこもりの当事者だった渡辺篤(アイムヒア プロジェクト)は、ひきこもりやコロナ禍に孤独を感じる人々が撮った月の写真を集めて展示し、ここにいない他者について考える場を作った。中島伽耶子は、展示会場を分断する壁を制作。壁の向こう側に想像する希望や、無視もできる暴力について問う。展示は人間関係に悩む若者世代へのメッセージが強いが、大人が改めて「共感」を思考するのにうってつけの空間だ。

「あ、共感とかじゃなくて。」
会期:7月15日(土)~ 11月5日(日)
会場:東京都現代美術館(東京都江東区三好4-1-1)
時間:10:00 ~ 18:00 (8/18・25は~21:00、入場は30分前まで)


4. リーン・バレラ「Yes, Can Do!」(√K Contemporary)

Reen Barrera 「Yes, Can Do!」 Installation View

制作の根源に見えるアイデンティティ、注目のフィリピン出身アーティスト

世界のコレクターから注目を集めるフィリピン出身の現代アーティスト、リーン・バレラの日本初個展。自身のアイデンティティが反映された作品を制作し、アメリカの美術館やギャラリーでも個展を開いてきた。バレラの制作の根源にあるのは、裕福ではなかった子ども時代の体験だ。スクラップを集めておもちゃやフィギュア作りをした日々が、想像力と創造力を育んだという。作品には幼少期の記憶、ストリートで目にするイメージや色彩があふれ、アールブリュット的な様相もみせる。

今回は、チャーミングながら目つきがするどい「Ohlala(ウララ)」 と犬の「Duge(デュゲ)」のキャラクターが登場する絵画や木彫を紹介。Ohlalaの顔に描かれた記号やフレーズには「表情は言葉を越えてコミュニケーションする」という意味が込められ、Dugeの発音はバレラの家族が話した原住民族の言葉のアクセントにオマージュを捧げている。展覧会名の「Yes, Can Do!(できるよ!)」には、経済的困難や社会的立場の壁を乗り越えたバレラからの、子どもたちに対するメッセージが託されているという。ほかに、木彫のキネティックアートも展示する。

Reen Barrera 「Yes, Can Do!」
会期:8月5日(土)~ 26日(土)
会場:√K Contemporary(東京都新宿区南町6)
時間:11:00 ~ 19:00 


5.  MICUSRAT - Loves music and art -
   SUN/ YOSHIROTTEN | Installation in Makuhari New City(SUN Park - 幕張海浜公園 -)

Sunmbient Bar(幕張メッセ)展示イメージ

YOSHIROTTENの代表作「SUN」約50点が幕張に出現

アーティスト・アートディレクターとして、国内外でアート、デザイン、音楽などジャンルを横断し活躍するYOSHIROTTEN(ヨシロットン)。彼がコロナ禍に1日1枚、1年間にわたりデジタルツールを用いて、描き続けた代表作「SUN」は、周囲の色彩を反射する銀色の太陽のイメージで構成され、SF的世界観と普遍性の交わりや、物事や季節の移ろいを表現している。

本展は、千葉の幕張地域を会場に、全長約12メートルの野外LEDスクリーン、高さ約2~3メートルのモノリス型、空中に浮遊するものなど、様々な形の「SUN」約50点を展示する。展示場所は、千葉の幕張海浜公園、見浜園、バス停留所、幕張新都心、音楽フェスティバル「Summer Sonic」会場となる幕張メッセ前広場、幕張の浜など。文化庁が、音楽とアートの融合による「新たな価値」を創造する作品をアーティストと産み出し、日本が世界の芸術文化発展のための拠点になることを推進するプロジェクト「MICUSRAT PRODUCTION」の一環として開催される。

MICUSRAT - Loves music and art - SUN/ YOSHIROTTEN | Installation in Makuhari New City
会期:8月18日(金)~ 20日(日)
会場:SUN Park - 幕張海浜公園 -(千葉県千葉市美浜区ひび野 2-116)ほか
時間:10:00 ~ 21:00※会場により異なる 

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