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  • 2024.05.24

新たに1100点以上の制作年を偽装? ダミアン・ハースト側は「構想年を付けるのが正しい」と説明

制作年の偽装疑惑の渦中にあるダミアン・ハースト作品について、新たに1100点以上の作品が実際の制作年と表示されている年が異なることがわかった。

自身の「The Currency」シリーズを眺めるダミアン・ハースト。Photo: Isabel Infantes/AFP Via Getty Images

ダミアン・ハーストが制作年を偽装しているという疑惑が初めて報じられたのは2024年3月のこと。1999年と記されたホルマリン漬けのシリーズ3点が、実際には2017年に制作されていたという。そのうちの1点である4メートルのイタチザメの作品は、ラスベガスの億万長者に約800万ドル(現在の為替で約12億円)で販売された。この件を報じたガーディアン紙の取材に対して、当時ハーストの広報担当者は「ホルマリン漬けのシリーズはコンセプチュアルなアート作品ですので、ハーストが作品に付けたのは構想年です」と説明していた。

しかし5月22日、ガーディアン紙はハーストの制作年にまつわる新たな疑惑を報じた。今回は、ハーストのドット・ペインティングから派生させた、A4の紙に手作業で点描を描いた2016年のシリーズ「The Currency」だ。「The Currency」の絵画の裏面には2016年と記されていたが、ある情報筋によると、絵画は2018年と2019年にも量産され、増産された数は1100点以上におよぶという。

実は「The Currency」が制作された5年後の2021年、ハーストは「The Currency」のNFT版を4851点制作し、1点2000ドル(現在の為替で約31万円)で販売している。対して絵画版は5149点存在していると発表されており、合計1万点の「The Currency」が存在していることになる。

NFT版の販売に際してはユニークな仕掛けが用意されており、購入者は紙版かNFT版を選択し、売れたNFT版の数だけ紙版を燃やすという決まり。当時、NFT人気が最高潮に達していたことから、この試みは世界的に注目を集めたが、翌年には「暗号通貨の冬の時代」に突入した。

増産されたのは、紙版とNFT版を合わせて1万点にする必要があったなのだろうか。弁護士事務所ハワード・ケネディの美術・知的財産担当であるジョン・シャープルズによれば、2017年にCryptoPunksが1万種類のキャラクターのNFTコレクションを発表し話題になっていたことから、当時、1万という数字はNFTの「マジックナンバー」とされていた

彼のスタジオ「Science Ltd」の代理人の弁護士は今回の偽装疑惑についても、ハーストは、コンセプチュアルなプロジェクトにおけるアート作品は「必ずしも物理的に制作された年」ではなく、「構想年」を付けるのが正しいと考えていると説明した。

US版ARTnewsはハーストの所属ギャラリーであるガゴシアンに意見を求めたが、現時点で回答はない。(翻訳:編集部)

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