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  • 2024.06.12

ロンドンの夏の風物詩「サーペンタイン・パビリオン」がお披露目!2024年はチョ・ミンスクが韓国の伝統建築をヒントに「広場」を創出

ロンドンのケンジントン・ガーデンで毎年夏に設営される「サーペンタイン・パビリオン」。2024年は韓国を拠点に活動する建築家のチョ・ミンスクが手掛け、6月5日にお披露目された。

チョ・ミンスクによる2024年のサーペンタイン・パビリオン《Archipelagic Void》。© Mass Studies Photo: Iwan Baan Courtesy: Serpentine

ロンドン中心部にある自然豊かな王立公園、ケンジントン・ガーデンに毎年夏に設営される「サーペンタイン・パビリオン」。パビリオンは著名な建築家やアーティストが設計し、そこではイギリスの社交イベントであるサマー・パーティなどが開催され、夏の終わりとともに姿を消す。まさにロンドンの夏の風物詩だ。今年は韓国の建築家チョ・ミンスクが選ばれ、彼が手掛けたパビリオンが6月5日にお披露目された。

サーペンタイン・パビリオンの主催は、ケンジントン・ガーデンにある美術館、サーペンタイン・ギャラリー。2000年夏、同館の30周年を祝うパーティのための特設会場の設計をザハ・ハディドに依頼したことから、毎年設置されるようになった。

設計者の条件は、イギリス国内に作品がないこと。設計者は短い工期内で、来場者が利用できるカフェとレクチャースペースを備えたパビリオンを設けなければならない。これまで、ポルトガルの二大巨匠、アルヴァロ・シザとエドゥアルド・ソウト・デ・モウラ(2005年)、オラファー・エリアソンとニューヨークの建築事務所スノヘッタ(2007年)、フランク・ゲーリー(2008年)、ヘルツォーク&ド・ムーロンアイ・ウェイウェイ(2012年)シアスター・ゲイツ(2022年)など名だたる建築家やアーティストが選ばれている。また、プリツカー賞を受賞した伊東豊雄(2002年)、妹島和世と西沢立衛による建築家ユニットSANAA(2009年)、藤本壮介(2013年)、石上純也(2019年)といった日本人建築家の活躍が目立つのも大きな特徴だ。2023年は、ベイルート出身でパリを拠点に活動する建築家、リナ・ゴットメが設計した。

チョ・ミンスク。Photo: Minsuk Cho, Mass Studies © Mok Jungwook

2024年の設計者に選ばれたチョ・ミンスクは現在58歳。ソウルの名門延世大学とコロンビア大学大学院で建築を学び、1998年にパートナーのジェームス・スレイドとともにニューヨークにチョー・スレイド・アーキテクツを設立。2003年に韓国に戻り、自身の事務所「マス・スタディーズ」を開設した。2004年と2010年のヴェネチア建築ビエンナーレや、2014年にサムスン美術館で展覧会が開催されたほか、彼の建築デザインとプレゼンテーションはニューヨーク近代美術館(MoMA)やシカゴ美術館などでアーカイブされている。

これまで手掛けた建築は、韓国の化粧品メーカー、アモーレ・パシフィックが運営する済州島の「ティーミュージアム」の繊細な空間からソウルのダイナミックな超高層ビルS-Trenueまで幅広い。ガーディアン誌に「私はいつもノー・マンズ・ランド(所有者のいない土地)にいた」 と話す通り、チョは先入観やルールに縛られずキャリアを積んできた。

チョ・ミンスクによる2024年のサーペンタイン・パビリオン《Archipelagic Void》。© Mass Studies Photo: Iwan Baan Courtesy: Serpentine

そんなチョが手掛けるパビリオンの名前は、「Archipelagic Void(群島の空洞)」。中央に円形の空間があり、そこから放射線状に伸びる5つの建造物(島)で構成されている。建造物はそれぞれに茶室、講堂、プレイタワーなどの目的を持っており、チョはこの構造を韓国の伝統的な建築「韓屋」に見られる小さな「マダン(広場)」からヒントを得たとイギリスのデザイン誌dezeenに明かした。「マダンは、人々が集うための『不在』の場所なのです」とチョは説明する。

パビリオンは順路を定めておらず、人々は5つの「島」を自由に巡ることになるが、円形の空間で結ばれている。チョは、「私たちのサーペンタイン・パビリオンに共通するテーマのひとつは、複数の条件がひとつの全体としてまとまることです。様々な人々があらゆる方向からやってきて、独自の瞬間、体験、シークエンスを選択し、構成していくことを楽しみにしています」と話した。

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