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大人気のバスキア作品が2年前の半額に!? コレクターの買い控え傾向を反映か

大手オークションハウスの春のセールの主役となったジャン=ミシェル・バスキア作品だが、今月末に開催予定のサザビーズ・ロンドンでは、2年前の半額という見積もりが付いている。

ジャン=ミシェル・バスキア《Portrait of the Artist as a Young Derelict》(1982) Photo: Courtesy of Sotheby's

今月下旬にロンドンで開催予定のサザビーズ近現代美術オークションに、幅約2.1メートルのジャン=ミシェル・バスキアの三連作《Portrait of the Artist as a Young Derelict》(1982)が出品される。

この作品は2022年にもクリスティーズに出品されていたが、残念なことに、当時からその価値は大幅に下がったようだ。当時の予想落札価格は3000万ドル(現在の為替で約47億3000万円)だったが、オークション開催直前に作品はひっそりと取り下げられた。そして今回のサザビーズでは、前回の半額となる1500万~2000万ドル(約23億円〜31億円)の予想落札価格が付けられている。

バスキア作品は通常、オークションの予想価格を大幅に上回ることも多く、これまで驚くほどの高値で取引されてきた。最近のセカンダリー・マーケットでの価格は依然として高いが、今回の安値は、コレクターの買い控えの傾向を表していると言える。オークションハウスが高金利による新しい購買習慣に合わせて予想価格を調整していることも、値付けの背景にはあるとみられる。

5月には、同じくバスキアの1982年の作品《Untitled(ELMAR)》がフィリップスの近現代美術オークションの最高価格となる4650万ドル(約73億円)で落札されたが、予想価格6000万ドル(約94億円)を大きく下回った。同月、同社がイブニングセールで販売したバスキアの他の2点、《Untitled(Portrait of a Famous Ballplayer)》(1981)と《Native Carrying Some Guns, Bibles, Amorites on Safari》(1982)も、期待に反してそれぞれ780万ドル(約12億円)と1260万ドル(約19億円)という予想ピッタリの結果(手数料込み)に終わった。

5月にもクリスティーズとサザビーズはバスキアの作品を出品し、バスキアとアンディ・ウォーホルが1984年にコラボした無題の作品は、サザビーズの予想落札価格1500万~2000万ドル(約23億円〜31億円)に対し1930万ドル(約30億円)で落札された。一方、1982年の別の作品《The Italian Version of Popeye Has no Pork in His Diet》は クリスティーズの3000万ドル前後の見積もりを少し上回る3200万ドル(約50億円)という結果だった。

今年初め、フィリップス・アメリカの社長、ジャン=ポール・エンゲレンはオンラインメディア『Puck』の記者、マリオン・マネカーに対し、バスキアが今や市場で伝説的な地位を獲得したという事実を鑑み、バスキアを「新しいピカソ」と呼んだ。マネカーによると、5月の1カ月だけでバスキア作品はおよそ1億2500万ドル(約197億円)相当売れたという。過去4年間を振り返ると、その数字は10億ドル(約1570億円)の大台を超える。

バスキア作品が市場で活況を呈していることは疑いようがなく、この傾向は今後も続く可能性が高い。唯一の疑問は、サザビーズは今回、コレクターの購買意欲を掻き立てられる価格設定ができたのかどうか。いずれにしても、もはやそれも重要ではない。なぜなら、サザビーズのウェブサイトによるとこの作品は保証と取消不可能な入札があり、つまり実質的には既に売れているのだ。となると唯一気になるのは、誰が一体この作品の次なる所有者となったのか、ということだ。

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