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  • 2024.06.26

ピカソ作品をトイレに展示! 「男子禁制展示」の違法判決に豪美術館が奇策で対抗

オーストラリア・タスマニア州の美術館、ミュージアム・オブ・オールド・アンド・ニュー(Mona)の男子禁制のインスタレーションに対する違法判決を受け、同館が奇策に打って出た。

《レディース・ラウンジ》の展示風景。Photo: Courtesy of Mona

オーストラリアのABCニュースによると、パブロ・ピカソの作品数点が、オーストラリア・タスマニアにあるミュージアム・オブ・オールド・アンド・ニュー(Mona)の女性用トイレの壁に飾られたという。

女性用トイレに展示される前、これらの作品は、アメリカ人アーティストのカーシャ・ケイシェルが同館で2020年から展開していたインスタレーション《レディース・ラウンジ》内で展示されていた。このラウンジは、男性の執事がシャンパンなどを提供する女性専用の「豪華な隠れ家」で、ピカソの作品以外にも、シドニー・ノーランをはじめMonaが所蔵する著名な作品が展示されていた。

ところが2023年4月、ニューサウスウェールズに住む男性、ジェイソン・ラウが35豪ドル(約3700円)を支払って同館を訪れた際に、男性であることを理由にラウンジへの入場が認められなかったことに対して、同館は「法律に沿った公正なサービスや商品の提供」ができておらず、州の反差別法に触れているとして、タスマニアの民事行政裁判所に異議を申し立てた。インスタレーションは申し立てがあった直後に閉鎖されたが、民事行政裁判所は直接的差別に当たるとの判決を2024年4月に下している。

裁判所は美術館に対し、4週間以内に男性も受け入れられる体制を設けるよう命じた。これを受けてMonaは、新たに設けた女性専用トイレの個室の壁にピカソの作品を並べることで、裁判所からの命令をかいくぐった。インスタレーションに加えた変更についてケイシェルは、Instagramに次のような投稿をしている。

「Monaにはこれまで男女共用のトイレしかなく、女性専用のトイレは設置されていませんでした。しかし、男性が起こした民事裁判によって《レディース・ラウンジ》の閉鎖が余儀なくされ、ピカソの作品をどこに設置すればいいのかわからなくなってしまったのです。ラウンジのスペースは今後、差別禁止法第26条に基づき、教会か学校、あるいはグランピング施設などとして再開予定です」

《レディース・ラウンジ》は、1965年まで女性がオーストラリア国内のパブで飲酒できなかった時代を参照していた。同国では、その権利を勝ち取るまで店側は女性たちの入店を拒否するか、隠し部屋のようなところで法外な料金を請求していたという。(翻訳:編集部)

from ARTnews

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