ARTnewsJAPAN

9月開催の光州ビエンナーレに史上初の日本パビリオン! キュレーターは山本浩貴

韓国・光州広域市を舞台に、2年に1度開催される芸術祭、光州ビエンナーレ。2024年9月7日から12月1日まで開催される今回は、史上初となる日本パビリオンが出展されることが発表された。

古くから学問や芸術が発展し、韓国の民主化に多大な影響を与えた1980年の「光州事件」の舞台となった韓国・光州広域市で2年に1度開催される芸術祭、光州ビエンナーレ。30周年、15回目となる今年は9月7日から12月1日まで開催される。アーティスティック・ディレクターは、キュレーターで美術評論家のニコラ・ブリオー。芸術祭の全体テーマは、「Pansori a soundscape of the 21st century(パンソリ 21世紀のサウンドスケープ)」だ。「パンソリ」とは、17世紀に朝鮮半島南西部でシャーマニズムの儀式に伴って生まれた伝統的な口承文芸。韓国語の 「パン」(空間・場所)と 「ソリ」(音・歌)に由来し、「公共の場からの音=庶民の声」を意味する。今回は30カ国73組のアーティストが参加し、街のさまざまな場所を会場にパンソリの精神を再構築する。

福岡市が主催するアートプロジェクト、「Fukuoka Art Next(FaN)」は、同ビエンナーレに史上初の日本館として出展することを発表した。会場は、カルチャーホテルLAAMとギャラリーHyeyumの2カ所にまたがる。キュレーターは、1986年生まれ、現在は金沢美術工芸大学講師を務める文化研究者、美術批評家の山本浩貴。山本は、2018年にロンドン芸術大学で博士号を取得後、 研究員として光州にあるアジア文化センターで勤務経験を持ち、著書に『現代美術史』(2019年、中央公論新社)『ポスト人新世の芸術』(2022年、美術出版社)などがある。

山本が手掛ける展覧会のコンセプトは、「We (Still) Have Things to Remember(私たちには《まだ》思い出すべきことがある)」。展示を通して、光州の歴史に刻まれた無数の声や沈黙に耳を傾けながら、今この瞬間の世界との接点を探る。出品作家は、福岡を拠点に国内外で活動する現代美術家、内海昭子と山内光枝。2人は、金属棒を使ったサウンドベースのインスタレーションや写真作品など、本展のための新作を発表する。

Akiko Utsumi Photo Caption: Akiko Utsumi, ‘The sounds ringing here now will echo sometime, somewhere’ (2024), 15th Gwangju Biennale Japan Pavilion, stainless steel and brass. Photo: Shunta Inaguchi

1979年生まれの内海昭子は、インスタレーション、ビデオ、写真など様々なメディアを使い、時間の連続性を表出する風景の再構成をテーマに作品を発表している。主な展覧会に、キュンストラーハウス・ベタニエン(ベルリン)、A4アートミュージアム(成都)、SeMA Nanji レジデンシー(ソウル)、關渡美術館(台北)、越後妻有アートトリエンナーレ(新潟)など。

Terue Yamauchi, ‘Signal Wave’ (2023), single channel video with sound, 30

1982年福岡生まれの山内光枝は、海を基点とした世界と人間のあらわれをテーマに映像、写真、ドローイング、パフォーマンスなどの創作活動を続ける。韓国・済州島の海女学校を卒業して素潜りで水中撮影を行い、現在はフィリピンなどアジアにフィールドを広げる。映像作品《Crossing Tides》(2019)は東京ドキュメンタリー映画祭で奨励賞を受賞した。近作《信号波》(2023)は、日本統治下の釜山に暮らした自身の家族史に向き合うセルフドキュメンタリーだ。

光州ビエンナーレ開催に先駆け、7月20日(土)の14:00〜16:15、福岡市内のアーティストカフェ福岡で、山本浩貴と内海昭子、山内光枝によるシンポジウムを開催。ニコラ・ブリオー、光州ビエンナーレ財団のチェ・ドゥスゥもリモート参加する予定。申し込みはこちら(先着40人/オンラインも可)。

光州ビエンナーレ
会期:9月7日(土)~12月1日(日)
会場:光州ビエンナーレホールほか

あわせて読みたい