子どもがアートを好きになる!「自由」がキーワードのTokyo Gendaiワークショップをレポート

我が子に、アートに触れて感性豊かに育ってほしい。そう願う親や教職者たちのヒントになりそうなワークショップがTokyo Gendaiで初開催された。キュレーターの丹原健翔と彫刻家の名和晃平がアドバイザーを務めた「IntoART」(主催:Gotoshool)の実践を見てみよう。

Photo: 加藤甫+川島彩水(たち)

絵を描き放題。インスピレーションが散りばめられた自由な部屋

Tokyo Gendaiで初めて開催された子ども向けアートワークショッププログラム「IntoART」は、日替わりで写真家の奥山由之やアーティストの川内理香子山田康平らが講師を務め、アドバイザーにはキュレーターの丹原健翔と彫刻家の名和晃平が加わった。会場は照明が落とされ、各テーブルにはキャンプで使うランタンが灯っている。テーブルの上には、紙やペン、粘土のほか、名和がPixCellシリーズで実際に使用しているクリスタルや、石、風船のおもちゃなどが置かれていた。これらは自由に使って良い。壁には大きな紙が貼られており、そこに絵を描くことも出来る。画材も使い放題だ。紙からはみ出して描いても良いように、壁や床には柔らかいマットが張り巡らされていた。

各テーブルには画材やおもちゃなど、さまざまなものが置かれていた。

訪れたのは2日目の夕方のワークショップ。そこに参加していた1組の親子は、朝のプログラムにも参加したという。息子は現在5歳。母親は、周りに迷惑がかかるので展覧会にはなかなか連れていけないという悩みを抱えつつも、ワークショップや保育所の授業など、0歳からアートに触れる機会を作ってきたという。その理由については、「自由に物事を感じる心を養ってほしいと思った。そして、将来的にはそれを自分の言葉で表現できる人になってほしい」と話す。今回のプログラムを息子はとても気に入っているという。それはなんと言っても、「自由である」ということ。「先生方は『こうしなさい』ではなく、『こういう道具も使えます』という提案をしてくれました。ほかでは経験しなかったことです」と語った。

ラックにはペン、絵の具などの画材が置かれ、それらは使い放題。後ろの壁には紙が貼られ、すぐに絵を描くことが出来る。Photo: 加藤甫+川島彩水(たち)

空の色は「空色」だけじゃない

見学したワークショップの担当講師は、フランス生まれで現在は京都を拠点にするBruno Botella。水や光を用いた作品で知られる彼は、「頭の中の家は噴水だ」と題し、フェルトペンを使って透明なセロファンに顔を描き、切り抜いたパーツを水槽に浮かべてOHPプロジェクターに投影し鑑賞するというプログラムを行った。子どもたちは青、赤などのペンを手にし、めいめいに目、鼻などを描き込んでいく。すると Botellaは、子どもたちに青の上に緑など、色を重ねることを提案した。なぜ色を重ねることを勧めたのか問うと、「現実の世界の空や草、人間の肌の色など、あらゆるものは1色で表現できないのです。それを教えたかった」と答えた。

Bruno Botellaと作品制作する子どもたち。Photo: 加藤甫+川島彩水(たち)

Botellaはみんなが描いたパーツを集め集めて、顔の輪郭が縁取られた水槽にランダムに浮かべると、その様子をOHPプロジェクターで投影する。まるで福笑いのようなユニークな光景に、子どもたちは楽しそうだった。

「IntoART」のレイアウトは、名和晃平のアイデアによるものだ。7歳と5歳の子の父親でもある名和は、Tokyo Gendaiの緊張感のある洗練された雰囲気に対してのエスケープゾーンにしたいと、キャンプの夜のように親密でリラックス出来る空間作りを心がけた。そして、手を伸ばせば画材があり、表現したいと思ったらすぐに制作にとりかかれる距離感。これは名和が自身の家で子どもたちのために行っている環境づくりを反映している。

今回のプログラムを通して、子どもたちに何を伝えたいのか名和に聞くと、「自由に何でも作って良いんだよ、というのを伝えたいです。アートというのは、かしこまった敷居の高い世界だと思われがちですが、そうではない。自分の想像力と創造性というものはそもそも繋がっていて、自分もアートが作れるんだ、アートの中に自由に出入りすることができるんだ、と最初から気付いてほしいのです」と話した。

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