武蔵野美術大学で学生らがデモ。留学生に対する学費値上げ決定に混乱広がる
武蔵野美術大学が2025年度入学の外国人留学生を対象に、「留学生修学環境整備費」として年間36万円の学費追加を通知した。現在、同校の在学生のうち留学生は約14%を占めている。
現在、武蔵野美術大学では、生徒数約5000人(通信を除く)に対して700名を超える留学生が在籍していおり、その数は増加傾向にある。こうした留学生たちに対し、同校は2025年度から学費の値上げを発表した。今回の値上げの理由として学校側は、 奨学金制度や留学生向け教育プログラム、キャリア支援などのサポート拡充を段階的に実施するとしているが、その詳細は明らかになっていない。
この突然の通知に対し一部の在学生らは学内で反対運動を行なっている。学費の値上げもさることながら、事前のヒアリングや具体的な説明がないことに対して不信感を抱いている学生が多いようだ。
7月14日(土)、15日(日)に同校で行われたオープンキャンパスに合わせ、在学生らによって組織された「武蔵美修学環境整備費反対の会」は、オープンキャンパスに参加する学生や家族らにこの問題を周知するべく正門の前で抗議運動を行った。訪れた人々の中には、校舎内で「可視化されていない問題に気づくのがアート」などと説明する教授たちと、校舎の外で抗議運動を行う学生らとのギャップに戸惑いを隠せなかった人もいたようだ。
一方、SNS上では、他国の大学では地元の生徒と留学生の学費に数倍の差があることも珍しくはないとして、今回の決定に肯定的な意見も目立つ。4月から国立大学の留学生授業料が自由化されたことも、値上げを正当と見る向きを後押ししているのかもしれない。
これまで学校側はこの抗議運動を静観してきたが、何者かが値上げ反対を訴える落書きを学校の設備にしたことで沈黙を破った。17日には学校のホームページで器物破損に対する注意喚起が掲載され、学校側も対応に乗り出すことになりそうだ。これに対し、武蔵美修学環境整備費反対の会も器物破損行為への注意を促す投稿を通じ、落ち着いた行動をとるように呼び掛けている。
武蔵野美術大学とは対照的に、同校と同じく東京が拠点の私立美術大学である多摩美術大学は、今年4月に外国人留学生向けの授業料減免制度を通知した。日本の美大留学生の待遇に関する議論はこれからさらに高まっていきそうだ。