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女性アーティストたちの功績に光を当てる「AWARE」に日本語セクションが開設! 日本の研究推進に期待

女性アーティストたちの功績を称えることを目的としたフランスの非営利団体「Archives of Women Artists, Research & Exhibitions(AWARE)」は、このほど日本チームを発足し、ウェブサイトに日本語セクションを開設した。

日本版セクションに掲載されている論文「日本における洋画の歴史と明治から戦前にかけての女性洋画家たち」より、写真前列右から山下りん、川路花、神中糸子、後列右から秋尾園、大鳥雛、アントニオ・フォンタネージ、山室政子と通訳の竹本五郎。1878年撮影。Photo: Wikimedia Commons

非営利団体「Archives of Women Artists, Research & Exhibitions(AWARE)」は、これまで世界的に広く知られてきた美術史に記述されてこなかった女性アーティストの功績に光を当てることを目的に、2014年にフランスのキュレーターで美術史家のカミーユ・モリノーらによって設立された。当時モリノーは設立にあたり、次のように語った。

「女性のアーティストは存在しない、あるいは非常に少ないという固定観念のために、あまりに多くの時間が失われてきました。今日、その存在は無視できなくなり、これまでとは異なる言葉、異なる運動、異なる前衛的な手法を用いて異なる物語を書くよう、私たちを促しています」

AWAREはさまざまな国や地域を扱うチームを組み、世界中の500人以上の研究者、キュレーター、フェミニスト美術史家、美術評論家やアクティビストによって書かれたテキストをウェブサイト上で公開し、18~20世紀の女性アーティストたちを可視化してきた。また、女性アーティストやジェンダー学についての調査研究を広く普及させるために、国際的な機関、大学、美術館、その他の独立した組織と連携し、シンポジウムや座談会、セミナーを開催し、出版物も編集している。さらに、2016年にはフランス文化省とのパートナーシップのもと、女性アーティストを対象とした「AWARE賞」を創設し、毎年、中堅1人と40年以上のキャリアを持つ1人に授与してきた。

そんなAWAREの日本チームがこの度発足し、AWAREウェブサイト内に日本語セクションが開設された。日本チームの代表は、女性アーティストの活動をサポートする非営利活動法人「Spectrum」の共同設立者でもあるインディペンデント・キュレーターの天田万里奈が務める。

この日本語セクションには、アドバイザリーボードに片岡真実(森美術館館長)、笠原美智子(長野県立美術館館長)、小勝禮子(研究者、美術史家、美術評論家、元栃木県立美術館主任学芸員、「アジアの女性アーティスト:ジェンダー、歴史、境界」創設者)、鶴見香織(東京国立近代美術館主任研究員)、横山由季子(東京国立近代美術館研究員)が名を連ねる研究プログラム、「19世紀から21世紀の日本の女性アーティスト」(2022年に開始した4年間のプログラム)の成果を反映させた論文「日本における洋画の歴史と明治から戦前にかけての女性洋画家たち」が公開されている。この論文では、明治期に入り「日本画」と「洋画(西洋画)」というジャンルが確立されていく中で、高橋由一や五姓田義松らとともに日本の近代美術史に貢献した数々の女性画家たちを紹介している。

また、家庭と画業の両立に苦心しながらも女性画家として2人目となる文化勲章を受章した日本画家、小倉遊亀(1895-2000)や70余年という長きにわたって制作を続けた、日本の近代洋画を代表する画家三岸節子(1905-1999)など、日本の古今の女性芸術家たちの生涯と活躍を知ることができるページも設けられている。

今後、さらなる日本の女性アーティストたちに光が当てられ、研究、理解、認知、そして議論が促進されていくことに大いに期待したい。

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