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来夏、横浜で世界的アートフェア「東京現代(TOKYO GENDAI)」開催 アジアのアートのハブに日本がなれるか?

保税地域のある横浜市内で、国際的なアートフェアが来夏から開かれることが分かった。米国版ARTnewsでも報道され、世界から注目を集めそうだ。主催者の幹部は、アートバーゼル香港の前身となったアートフェアを、かつて香港で創設した人物。彼が関わるフェアということは、横浜のフェアも将来的な発展が期待される。今秋フリーズが始まるソウルや香港に代わって、日本が、アジアのアート界のハブになれる日が来るのか?

「東京現代」は2023年7月7日~9日、日本のパシフィコ横浜で開催される。 Courtesy Tokyo Gendai

主催するのは、アジア太平洋地域で大規模なアートフェアをいくつも手がけているアート・アセンブリー。日本を新たな開催地に加えることにした。

新しいフェアは「東京現代(TOKYO GENDAI)」の名称で、横浜市のパシフィコ横浜に、80~100の国際的なアートギャラリーを集める。2023年7月7~9日の日程で、6日がVIP内覧日。本日6月10日から出展ギャラリーの応募を受け付ける。

アート・アセンブリーの共同創設者マグナス・レンフリュー氏は、ARTnewsの電話インタビューにこう答えた。「いま非常にダイナミックな瞬間を迎えている。アジアのアートマーケットは成熟し、それぞれの地域で独自のアートフェアを開くに値する、新しい段階に到達しつつある。現在のアートフェアの開催地以外でも、新たな観客を開拓できる潜在力は大いにある。私たちの仕事は、現代美術のコレクター層と観客を広げ、深めることだ」

アート・アセンブリーは5つのアートフェアを運営している。台湾の台北當代(Dangdai)、インド・デリーのインド・アート・フェア、オーストラリアのシドニー・コンテンポラリー、そして数度の延期の末、来年1月にシンガポールで開催予定のアートSGだ。アジアの主要なアートフェアとしては、ほかに、毎年春に開催されるアートバーゼル香港や、今年9月に初開催となるフリーズ・ソウルがある。

「東京現代」は、メインとなるギャラリーセクションのほか、専門セクションを設ける。新進気鋭または中堅アーティストを紹介する「花」、すでに地位が確立されている、または歴史的に重要なアジアのアーティストを紹介する「枝」、NFTやゲーム、AR・VRなどのデジタルアートを中心としたブース「種」の3つだ。

フェアは「東京現代」と東京を名乗るものの、開催地は横浜。東京湾に面しているとはいえ、都内から電車で約30分かかる。この点についてレンフリュー氏は、東京近郊でこの規模のアートフェアが可能な会場はほとんどなく、地元の関係者やギャラリストはパシフィコ横浜が「正しい選択、正しい場所」だと同意した、と話す。

アート・アセンブリーのチーム──レンフリュー氏と、共同経営者のサンディ・アンガス氏、ティム・エッチェルス氏──は、「東京現代」のディレクターに高根枝里氏を選んだ。高根氏は、独立系アートコンサルタントとして、アーティストやコレクターのほか、Google Arts & Culture Japanなど企業の仕事にも取り組んできた。それ以前には、東京のセゾンアートギャラリー(セゾン現代美術館運営)でアートディレクターを務め、ニューヨークの国際交流基金でも働いていた。

マグナス・レンフリュー氏(写真左)と高根枝里氏 Courtesy Tokyo Gendai

「東京現代」の選考委員は、ペースギャラリーの代表兼CEOマーク・グリムシャー氏、ロサンゼルス拠点のブラム&ポーの共同創設者ティム・ブラム氏、ロンドンのサディコールズHQのディレクター、ジョン・オ・ドハーティ氏、台北のイーチ・モダンの創業者ヤジ・フアン氏。ペースは香港とソウルに、ブラム&ポーは東京に支店がある。

「日本は今も、これまでも、そしてこれからも常に、国際的な文化シーンで重要な役割を果たすだろう」と、グリムシャー氏は声明の中で述べている。「今こそ、日本は世界有数のコレクター集団としての地位を取り戻すべき時だ。『東京現代』を画期的なフェアとして確立することが、次の一歩となる」

主催者は選考委員会に加えて、主要なコレクターを含むアドバイザリーグループを組織した。田口美和氏、高橋龍太郎氏、大林剛郎氏、ハワード&シンディ・ラコフスキー夫妻、森美術館理事長の森佳子氏らだ。このうち、大林氏とラコフスキー夫妻は、ARTnewsが毎年まとめている、世界のトップ200コレクターの常連メンバーだ。

「彼らの役割は、彼らのネットワークにアクセスし、可能な限り幅広いコレクター層を取り込むための最善の方法をフェア側に助言することだ」と、レンフリュー氏は話す。

アジアでは、香港が長らくアート市場の中心にある。理由のひとつはアートバーゼル香港だ。このフェアは、レンフリュー氏が2007年にアート香港として共同設立したものが前身で、氏は双方で設立ディレクターを務めた(レンフリュー氏は2014年にアートバーゼル香港を離れた)。

「香港は自然な着地点だった」とレンフリュー氏は言う。「以来、市場が発展してきた」

だが、この数年、中国本土による締め付けの強化によって、アート市場の中心地としての香港の衰退が憶測されている。大手ギャラリーは、今秋フリーズ・ソウルが始まるソウルに集まり、支店をオープンしている。

「東京現代」は、1980年代の最盛期以降、衰退し、波のある日本のアート市場が、ソウルに取って代わると見ているのか? レンフリュー氏は、「東京現代」は、アジア全域で起きている全ての活動と競合するのではなく、むしろ補完することを目指すと述べる。

レンフリュー氏は言う。「アジアは世界の人口の半分を擁しており、人々のアジアに対する理解はいま成熟しつつある。だから、どちらか、ではなく、どちらも、なのだ。人々はネットワークを広げる別の機会を探している」

さらに氏は付け加える。「もはや、(なんでもそろう)総合店舗の時代ではない。アートフェアには大いなる可能性がある。世界最速の経済圏のいくつかが提供できる」

「東京現代」の公式HPはこちら

(翻訳:編集部)

※この記事は、米国版ARTnewsに2022年6月9日に掲載されました。元記事はこちら

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