アーチー・ムーアのヴェネチア・ビエンナーレ金獅子賞受賞作、英テートと豪QAGOMAへの収蔵が決定
ヴェネチア・ビエンナーレで金獅子賞を受賞したオーストラリア館の作品《kith and kin》がテートとオーストラリアのクイーンズランド州立美術館近代美術館(QAGOMA)に収蔵されることが決定した。ビエンナーレの会期が終了すると本作は2026年までQAGOMAで展示される予定だ。
ヴェネチア・ビエンナーレで金獅子賞を受賞したオーストラリア館のアーチー・ムーアによるインスタレーション《kith and kin》(2024)が、イギリスのテートとオーストラリアのクイーンズランド州立美術館近代美術館(QAGOMA)に収蔵されることが決定した。これによって本作はテートとQAGOMAで共同管理されることになる。11月にヴェネチア・ビエンナーレが終了した後は、QAGOMAで2026年まで展示される見通しだ。
本作では、長方形のテーブルの上に部分的に炭消しされた大量の書類が置かれている。それらには、警察に拘束されている間に先住民が死亡したことが記されており、会場の壁と天井には、カミラロイ族とビガンブル族の血を引くムーアが、6万5000年に及ぶ一族の歴史をたどった記述が残されている。
ムーアは過去のインタビューで、この作品は先住民の歴史が失われていることと、人種差別がはびこっていることを題材にしていると語り、こう続けている。
「この作品では、なぜこうした差別が今でも起きていて、なぜ誰もこの問題を解決しようとしないのかを問うているのです」
また、クイーンズランド州立美術館近代美術館の館長を務めるクリス・セインズはムーアの作品についてこう語る。
「《kith and kin》の鑑賞体験は、歴史と祖先の重みが同時に感じられる壮大で感動的なもの。2000世代以上にわたる個人の家系図を描くという想像を絶する試みによって、ムーアは深く刻まれた人間のつながりを示す並外れた作品を作り上げたのです」
また、テートの館長を務めるマリーナ・バルショーも収蔵にあたり声明の中で、「ムーアの《kith and kin》はとてもパーソナルな作品であると同時に、政治的な作品でもあります。この作品は、はるか昔から続く人類の関係について深く考えさせてくれます」と述べる。「この素晴らしい作品をQAGOMAと共有できているということは、テートとオーストラリアの美術館との結びつきがますます強くなっていることを意味しています」(翻訳:編集部)
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