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主要アートフェアが共同で気候変動対策を発表。2030年までに二酸化炭素排出量を50%削減

世界中から人々や美術品が集まるアートフェアにおいて、温室効果ガスの排出量を2030年までに半減させる──アート・バーゼルフリーズTEFAFを含むアートフェアのグループが9月26日、非営利団体ギャラリー・クライメート・コーリション(GCC)と共に気候変動対策の新ガイドラインを発表した。

2023年フリーズ・ロンドンの展示風景。Photo: Courtesy of Linda Nylind/Frieze.

アート・バーゼルフリーズTEFAFなどの主要なアートフェア開催組織で結成されたグループとギャラリー・クライメート・コーリション(GCC)は9月26日、気候変動対策への新たな取り組みに対する共同声明およびガイドライン「アートフェア・ツールキット」を発表した。

GCCは美術業界向けの環境負荷に対する持続可能性ガイドラインを提供する非営利の国際会員制組織だ。2020年に設立され、現在は1500以上の芸術団体が加入している。同組織によると、一般的なギャラリーの年間の二酸化炭素排出量のうち30%はアートフェアの活動に関連しているという。そのうち約70%が航空貨物にあたる。

ガイドライン発表の経緯についてGCCは、「40以上のアートフェアを運営する13の組織が、気候危機が将来的に絵画・彫刻・写真などの視覚芸術分野を破壊するという認識によって団結し、新たな基準について合意に達しました。その結果、前例のないフェア間の繋がりと、変革へのロードマップが示されたのです」と説明する。

今回の取り決めでは、2030年までに温室効果ガス排出量を少なくとも50%削減する。加盟したアートフェアは、二酸化炭素の排出量を測定し報告するとともに、排出量の積極的な削減に努め、来場者やサプライチェーンに対して二酸化炭素の削減について啓発活動を行う。

ガイドラインには、アートフェア主催者が排出量を追跡し、削減するための実践的なステップ、目標、戦略のロードマップが示されている。その中での優先事項は使い捨ての資材と航空貨物の削減だ。

GCCのディレクターであるヒース・ロウンズはガイドラインについて、次のようにコメントした。

「現在は気候崩壊の時代に深く入り込んでおり、その壊滅的な影響が世界中に広がっています。このことを踏まえ、主要なアートフェアは、もはやこれまで通りのやり方ではビジネスが成り立たないことを認識しています。アート業界は、その運営方法について厳しい現実を直視し、これまでの慣行を修正していかなければなりません。この画期的な声明の作成における協調的なアプローチと、協力の上でガイドラインの作成がなされたという事実もまた、集団でのアクションが体系的な変化に繋がる可能性を示す証拠でもあります」

二酸化炭素排出量削減の取り組みはすでにフリーズが実践済みだ。フリーズは、持続可能性を支援するHope Solutionsに、2019年のフリーズ・ロンドンの二酸化炭素排出量の監査を依頼した。その結果、2018年は207トンだったところ、90トンにまで削減することに成功した。しかし、この監査では、来場者や出展者の移動、あるいは作品をフェアに輸送する際の炭素コストは含まれていなかった。

今回の取り組みについて、フリーズのCEOであるジョン・アッシュマンは声明で、「フリーズは、より持続可能な未来へのコミットメントを共有するGCCの積極的なメンバーであることを誇りに思います。このツールキットの確立は、美術界の環境への影響を軽減するための貴重な指針を提供するという、大きな前進を意味します」と語った。

また、TEFAFの責任者であるウィル・コーナーは、声明の中で、同組織はすでにTEFAFマーストリヒトにおいて2019年以降のエネルギー消費量を43%減少させているとした上で、「美術界における我々の立場には、大きな責任が伴います。構造改革には即時の集団行動が必要です」と述べた。(翻訳:編集部)

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