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  • 2022.02.04

謎につつまれたヒップホップアーティスト、ラメルジー。遺産はジェフリー・ダイチの手に

ヒップホップの歴史の中で、いや、ほかのどんなカルチャーの歴史においても、ラメルジーほど長く大きな影を落とした人物はいないだろう。グラフィティアーティスト、ミュージシャン、そして多才な神秘主義者で周囲にインスピレーションを与える存在でもあったラメルジー。彼は、1970年代から2010年に亡くなるまで、ニューヨークのダウンタウンで活動するさまざまな人の輪の中を駆け抜けた。

スプレー塗料やプラスチックシートを使った、ラメルジーのコラージュ作品《Sports Corner》(1991) Photo by Cooper Dodd Courtesy of the Estate of Rammellzee and Jeffrey Deitch, New York (以下同)

ここ数年高まっているラメルジー熱を活用しようと、その遺産はアートディーラーのジェフリー・ダイチに引き継がれた。ダイチは、ラメルジーの作品を「アート・バーゼル・マイアミビーチ」2021に出品。また、2022年秋には、ロサンゼルスにある自らのギャラリースペースで、ラメルジーの多彩なアート作品を集めた展覧会が予定されている。

ダイチは1980年にニューヨークでラメルジーに出会い、初期の活動に関わった。その中には、ジャン=ミシェル・バスキアとのコラボレーション(1983年の楽曲「Beat Bop〈ビートボップ〉」など)のほか、1982年のチャーリー・エーハン監督の映画「ワイルド・スタイル」や、ヘンリー・シャルファントによるグラフィティドキュメンタリー「スタイル・ウォーズ」といった時代を象徴する作品への出演がある。

ダイチは、ロサンゼルス現代美術館の館長を務めていた2011年に「Art in the Streets(路上のアート)」展を企画。その中でラメルジー作品を展示した。2018年にニューヨークでレッドブルアーツが行った回顧展や、2021年5月にボストン美術館で閉幕した展覧会「Writing the Future: Basquiat and the Hip-Hop Generation(未来を記す:バスキアとヒップホップ・ジェネレーション)」でもラメルジーが取り上げられている(ARTnewsでは、2021年5月にグレッグ・テイトがラメルジーの生前に行ったインタビューを掲載した)。

ラメルジーの遺産代理に関してダイチが出したプレスリリースには、「Art in the Streets」展の頃に書かれたファブ・5・フレディの回想が含まれていた。そこには次のように書かれている。「ラメルジーと知り合った時、彼はアートの世界にまったく目を向けていなかったし、それがどう機能しているかも知らず、ただ自分のアイデアのためのプラットフォームと観客を探していたんです。私はラメルジーの面倒を見ることにして、ジャン=ミシェル・バスキア、チャーリー・エーハン、エディト・デアーク、パティ・アスターなど、ダウンタウンに集まる私の友人たちに彼を紹介しました。彼らは皆、ラメルジーの才能を認め、こう考えたんです。ラメルジーは世に知られ、人々の目に触れるべき魅力的なアーティストだと」(翻訳:平林まき)

※本記事は、米国版ARTnewsに2021年11月30日に掲載されました。元記事はこちら

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