「プーチン宮殿」の建築家が約69億円の税金を滞納。イタリア警察がモディリアーニやピカソの作品を押収
イタリア当局は、黒海沿岸のリゾート地にある豪邸、通称「プーチン宮殿」を設計した建築家、ランフランコ・チリッロから美術品を含む巨額の財産を押収した。この豪邸はプーチン大統領のものとされているが、プーチンもチリッロもそれを否定している。
アートニュースペーパー紙の報道によると、当局は宝石や現金など1億4400万ドル(約196億円)相当の資産と、モディリアーニやピカソの作品を含む美術品150点を押収したという。
今回の資産差し押さえは、チリッロが高額の買い物をしたことによる脱税目的で、市民権を得たモスクワへの移住を偽装した可能性があると、当局が疑いをかけたことがきっかけとなった。チリッロはほかにも複数の犯罪容疑で告発され、5000万ユーロ(約69億円)近い税金を滞納している。また、マネーロンダリングについても捜査が進行中だ。
「チリッロは、家族や先祖伝来の財産がイタリアにありながら、2013年から19年にかけて巨額の申告漏れがある。それを取り調べ中だ」と、イタリアの法執行機関で金融犯罪を扱うグアルディア・ディ・フィナンザ(金融警察)は声明で述べている。
チリッロの弁護士であるステファノ・ロジャコノは嫌疑を否定し、声明で次のように反論した。「チリッロはモスクワにいる。イタリアの一流不動産や美術品を購入したのは、妻と娘のためだった。にもかかわらず、国外移住は偽装だという主張の根拠とされていることに非常に失望している」
押収された美術品は、チリッロの裁判が結審するまで宙に浮いたままになる。金融警察のマルコ・トッラはアートニュースペーパー紙の取材に、「慣例によれば、(裁判が終わる前に)裁判所が確定的とみなされる有罪の評決を出した場合、美術品は国が没収し、最終的にはイタリア国内の美術館に引き渡される」と回答した。(翻訳:清水玲奈)
※本記事は、米国版ARTnewsに2022年8月5日に掲載されました。元記事はこちら。