「期待はずれ」の声も。12月のアート・バーゼル・マイアミ・ビーチ、複数の有力ギャラリーが出展見送り

7月に発表されたアート・バーゼル・マイアミ・ビーチの参加リストから、10軒近くのギャラリーが消えた。業界全体でフェア市場を再考する動きが広がっている。

アート・バーゼル・マイアミ・ビーチ2024年版のVIPデーの様子。Photo: Matthew Carasella/Courtesy Art Basel
アート・バーゼル・マイアミ・ビーチ2024年版のVIPデーの様子。Photo: Matthew Carasella/Courtesy Art Basel

12月にフロリダ州マイアミで開催されるアート・バーゼル・マイアミ・ビーチは、7月に出展ギャラリーを発表していたが、メイン会場となる「Galleries」に参加予定だった10軒近くがリストから消えた。

オルトマン・シーゲル(Altman Siegel)とティルトン(Tilton)は閉廊を理由に不参加、一方、カスミン(Kasmin)は8月にオルニー・グリーソン(Olney Gleason)に改名し、新しい屋号でのフェア参加となる。

しかし、ミゲル・アブレウ(Miguel Abreu)、シャンタル・クルーゼル(Chantal Crousel)、アリソン・ジャック(Alison Jacques)、ペーター・キルヒマン(Peter Kilchmann)、エドワード・タイラー・ナヘム(Edward Tyler Nahem)、ルイザ・ストリーナ(Luisa Strina)、リア・ルンマ(Lia Rumma)、そして上海のBANKギャラリー(BANK)などのギャラリーが、出展を取りやめた。

こうした動きの背景には、厳しい市場環境がある。メガギャラリーでさえ主要フェアでの売り上げが減少しており、そこに運送費や保管費用、そして一部のギャラリーを閉廊に追い込んだ市場の冷え込みも加わっているからだ。

とはいえ、フェアへの参加を見送る理由はそれぞれだ。例えばミゲル・アブレウは、今年はフリーズ・マスターズを選び、R.H.クエイトマン(R. H. Quaytman)の個展形式の展示を行った。

「秋に3つのフェアに参加すると手が回らなくなる」

自身の名を冠するギャラリーを経営するアブレウはそう語る。「展示に集中しなければなりませんし、率直に言って、昨年のマイアミは期待外れの結果に終わりました」

また、US版ARTnewsがアート・バーゼル・パリ開催時期に業界関係者に取材したところ、複数から、マイアミ・ビーチが出展者確保に難航しているとの声が聞かれた。そのうちの1人であるニューヨークのディーラーは、現時点でギャラリーの数は不足しているかもしれないが、最終的に出展者は集まるだろうと推測する。ただし、コレクターたちを満足させられるような内容になるかはわからない、とも付け加えた。

一方、マイアミ・ニュー・タイムズ紙が報じたところでは、今年のアート・バーゼル・マイアミ・ビーチにはマイアミに拠点を置くギャラリーが6軒出展し、地元ギャラリーの参加数としては過去最多となる。うち2軒は初参加となり、NADA Miamiに長年参加していたニナ・ジョンソン(Nina Johnson)と、元々キーウを拠点とし、ロシアによるウクライナ侵攻後にマイアミのアラパタ地区に拠点を開いたヴォロシン・ギャラリー(Voloshyn Gallery)が含まれる。

アート・バーゼルの出展契約には、参加を取りやめる場合、ギャラリーは「7日以内に損害賠償金として補償を支払う義務がある」とある。また、2025年8月1日以降に取りやめる場合、ギャラリーは参加費の50%を、10月1日以降は全額をキャンセル料として支払わなければならない。

ちなみに、フリーズの出展契約にも同様の条項が組み込まれており、来年のフリーズ・ロサンゼルスの場合、8月22日から9月30日の間に出展を取りやめた場合、参加費の20%を支払うことが義務付けられる。9月30日から11月14日に取りやめた場合は50%に、11月14日以降は全額支払うこととなる。

こうしたキャンセルがある一方、参加ギャラリーの顔ぶれを見ると、昨年出展した約220のギャラリーが今年も参加する。このうち200は、2024年のGalleriesセクションに参加していた。今年は新たに、「Nova」「Positions」「Survey」からGalleriesへ移行する11のギャラリーと、アート・バーゼル・マイアミ・ビーチ自体に初出展する19のギャラリーが加わる。また、ロックス・ギャラリー(Locks Gallery)、ブルース・シルヴァースティーン(Bruce Silverstein)、ジェーン・ロンバード・ギャラリー(Jane Lombard Gallery)、アレクサンダー・グレイ・アソシエイツ(Alexander Gray Associates)、そしてパーク・ビュー/ポール・ソト(Park View / Paul Soto)を含む16のギャラリーが、しばらくぶりに戻ってくる。

なお、BLUM、ローナ・ホフマン(Rhona Hoffman)、ペレス・プロジェクツ(Peres Projects)など、閉廊によりリストから外れたギャラリーも複数ある。加えて、閉廊ではなく戦略的な判断から出展を見送ったギャラリーも多い。そのなかには、ガルリ・ブッフホルツ(Galerie Buchholz)、カンパニー(Company)、ピラー・コリアス(Pilar Corrias)、ダン・ガレリア(Dan Galeria)、DCムーア(DC Moore)、グリーン・ナフタリ(Greene Naftali)、ガルリ・ナーゲル・ドラクスラー(Galerie Nagel Draxler)、デヴィッド・ノーラン(David Nolan)、ワディントン・カスト(Waddington Custot)などが含まれる。出展者数が減少したことについて、アート・バーゼルの広報担当者はこう語る。

「選考委員会と協議のうえ、出展者リストにわずかな変更が加えられました。これは開催日が近づいてくるとよくあることではありますが、フェアのクオリティを確保するために下された決断です。当フェアの方針として、そして出展ギャラリーへの配慮から、参加見送りの理由についてはコメントを控えさせていただきます」

(翻訳:編集部)

from ARTnews

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