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  • 2022.11.09

「NFTはポンジスキーム」──米ブルームバーグのベテラン記者が一刀両断

ブルームバーグが去る10月25日に発表した暗号資産に関する大特集で、ベテラン金融ジャーナリストのマット・レビーンはNFTを酷評。さらにNFTだけでなく暗号資産に関連するプロジェクトの大半は「ポンジスキーム」であると断じた。

Nifty Gatewayに出品されたジョアニー・ルメルシエのNFT《ポリブロック―正多面体》 Joanie Lemercier's "Polyblock - Platonic solids" NFT on Nifty Gateway Joanie Lemercier

「悪い言い方をすれば、あらゆるWeb3プロジェクトは、ポンジスキーム(詐欺師チャールズ・ポンジの名前に由来する、一種の投資詐欺)でもある」

英語で4万ワードにもおよぶ長大な記事の中でこう語ったマット・レビーン。その主張は、「大半のトークンは、買値より高値で他人に売りつけようという、明確な目的のもとに買われている」というものだ。

「他人がトークンを買ってくれると見込む、その理由は何だろう? プロダクトを気に入ってくれる人がいるから? あるいは、さらに大枚をはたいてくれる人に売りつけることで、ひともうけを狙う人がいるからだろうか? いったいどこまで行くのだろう?」

レビーンはWeb3の台頭という大きな枠組みの中でNFTの問題を取り上げ、「NFTには根本的に価値がない」とする自説を裏付けるべく、いくつかの根拠を挙げている。NFTの技術的な脆弱性、NFTの所有権に関する法的根拠が(少なくとも知的所有権については)薄弱な点、さらにはNFTアートの大半が「ゾンビや子ネコ」を描いたものだという世間の認識などがそれにあたる。

NFTに関して、技術的、法的な問題が顕在化しているのは間違いない。中でもレビーンが提起する最も根本的な問題は、彼の言葉を借りるなら「アートがブロックチェーン上に存在し得ない」ことにある。

「NFTを買ったとしても、買い手が所有するのは、どこかのWebサーバーの情報を指し示すポインターを手に入れたことを証明する、ブロックチェーンの記録のみだ。そのサーバーにサルの画像が収められているかもしれないが、記録元のブロックチェーンは、その画像とは一切関わりがない」

ジェネラティブアートのプラットフォームであるArt Blocksにミント(mint=NFTを新たに発行・作成)されているNFTのように、ブロックチェーン上に存在するNFTも数多くある。だが、大半のNFTはそうした仕組みになっていないのはラビーンの指摘の通りだ。

2013年からデジタルアート・ギャラリーのTransferを運営するケラニ・ニコール(Kelani Nichole)は、2021年の取材時に、大半の人がこの点を知らないことに懸念を示していた。

「NFTはオンラインで購入できて、権利を公に示すことのできる資産のひとつにすぎません。いわばレシートなのです」とニコールは指摘する。「しかし、本当の意味で作品を所有するには、アーカイブパッケージを丸ごと手に入れる必要があります」

つまり、デジタルアートを所有し、維持管理するには、単にトークンを買うだけでは済まないということだ。

NFTとアーティストの「権利」

さらにレビーンが指摘しなかった問題点もある。NFTでは、売買時にロイヤリティの一部が作品を制作したアーティストに入ることになっているが、現実には必ずしもアーティストの手元に届いていないのだ。その原因は、NFTマーケットプレイスがそれぞれに異なるスマートコントラクト(契約の検証から執行までを自動で行うプログラム)を設定しているため、NFTが異なるプラットフォーム間で売買された時に、これらのスマートコントラクトが適切に実行されない点にある。

法的な問題に関しては、状況はさらに悪い。

「ブロックチェーンとJPEG、所有権を結ぶ法的なつながりは強くない」とレビーンは指摘し、この三者にまつわる権利は、「文化的慣例として行使されているにすぎない」と述べている。

知的所有権を専門とする弁護士、ジェフ・グラック(Jeff Gluck)は、2022年にUS版ARTnewsに対してこう語っている。

「法廷において、『ブロックチェーン上に置いたのだから、自分は権利を行使できる』とは主張できない。なぜなら(ブロックチェーンは所有権=オーナーシップを証明するものとして)認められていないからだ」

NFTに関して認められているのは著作権=コピーライトだ。だが、そのNFTに著作権が付与されないとしたら、何が起きるだろうか?

暗号資産をめぐる法整備はまだ道の途中だが、これらの法律と知的所有権にまつわる領域の第一人者であるアンドレス・グアダムズ博士は、NFTの中でもPFP(Profile-Picture)と呼ばれるプロフィール画像用コレクションの大半は、オリジナリティや創作性に関する現行の基準に照らし合わせると、著作権保護の対象にはならないとの見解だ(その一例が、約1万点の生成画像からなる「ボアード・エイプ・ヨット・クラブ=Bored Ape Yacht Club=BAYC」だ)。

価値は誰のもの?

もし今回のレビーンの主張に難があるとすれば、それは、「大量のゾンビや子ネコの画像で人々から金をむしり取る、PFPコレクション以上のものではない」とNFTを蔑んだ点だろう。NFTは初期のデジタルアート・シーンにそのルーツを持ち、販売が難しいこうした作品で対価を得るための、アーティストたちの努力の結晶だ。

「私たちは、ネットワークでつながるデジタルリアリティへと世界が変貌していくさまを目の当たりにしてきました。この世界では、クリエイティブなメディアが不可欠な役割を果たしていますが、この技術(=NFT)が確立するまでは、メディアの価値を直接的に顕在化する方法は存在しませんでした」

草創期にNFTにつながる概念を提唱したひとりであるケビン・マッコイは、過去にこう語っていた。マッコイはこう続ける。

「私が見る限り、現在のゴールドラッシュは、平均化、あるいは失われた均衡を取り戻そうとする動きです。(デジタルアートの)価値そのものはかねてから存在していましたが、今の動きによって、これを提供する立場であるクリエイティブ・コミュニティの側に、価値をぐっと引き寄せることができたんです」

だがマッコイは、持続可能な形でNFTを活用していくには、行き過ぎた事例や楽天的すぎるコミュニティのムードに自覚的であること、そして、この空間をより良いものにしていくための努力が不可欠だと指摘する。これは多くの従来型のアートならびにデジタルアートのコレクターが、情熱をもって取り組んでいるトピックでもある。

*from ARTnews

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