クリムトの名画に黒い油。環境活動家の行為は「逆効果」とウィーンのレオポルド美術館館長が非難
美術品を標的にした環境活動家の抗議活動が続く中、今度はウィーンのレオポルド美術館でグスタフ・クリムトの絵に黒い油がかけられた。作品そのものに被害はなかった。
世界中で、各国政府に迅速な気候変動対策を要求する抗議行動が相次いでいる。これまで、英国ではゴッホがトマトスープを浴び、ドイツではモネにマッシュポテトが投げつけられ、カナダのバンクーバーではエミリー・カーの作品にメープルシロップがかけられた。
15日にウィーンでグスタフ・クリムトの絵に黒い油を撒き散らしたのは、モネ作品への攻撃を行ったドイツの環境活動団体「最後の世代(Letzte Generation)」だ。被害に遭ったのはクリムトの傑作の1つ《死と生》(1910-11)で、レオポルド美術館の目玉作品でもある。
この抗議行動を記録した動画には、活動家の1人が黒い油を絵にかけ、もう1人が手を貼り付ける様子が映っている。その後、警備員が制止に入り、その場から引き離した。同団体はツイッターに、「新たな石油・ガスの採掘は人類への死刑宣告だ」と投稿している。
一方、レオポルド美術館のハンス=ペーター・ヴィップリンガー館長は声明を出し、「こうした環境活動家の懸念はもっともだが、芸術作品への攻撃は、気候危機を防ぐという目標をかえって妨げる間違った方法だ」と述べている。
これまで起きた抗議活動では、作品の被害は最小限あるいはゼロだった。英国のジャスト・ストップ・オイルなどの活動家は、作品に危害を加えることを目的としていないとしている。
しかし、レオポルド美術館によると、絵画を保護するガラスやフレーム、近くの壁や床に「はっきりとした、かなりの」ダメージがあったという。
同美術館の広報担当者は、逮捕者が出たかという質問に「警察が活動家の身元を確認しましたが、私が知る限りまだ捕まっていません」と答えている。
世界各国の美術館館長は、標的とされる美術品の「脆弱性」を理由に、活動家の抗議行動を非難する共同声明を発表した。また、こうした行為を未然に防ごうと、警備を強化する動きも出ている。
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