古代バスク人にも文字文化はあった! スペインの考古学チームが発見
スペインの考古学チームが、これまで文字を持たないと考えられていた古代バスクの部族に文字文化があったことを証明する重大な発見をしたと、西『エル・パイス』紙が報じた。
2021年6月、スペインに拠点を置くアランサディ科学協会の研究チームは、スペイン北部のイルレギーにある遺跡を発掘中に、手のひらに穴が開いたような形の青銅製の遺物を見つけた。当初は、扉に掛けて使用されるお守りと考えられていたが、22年になって修復が行われ、文字が刻まれているのを発見した。この「イルレギーの手」と呼ばれる遺物に書かれた文字は、鉄器時代後期のヴァスコン族が話していたプロトバスク語(エウスケラ語とも呼ばれる)の最も古い例であると考えられている。
バスク大学のインド・ヨーロッパ言語学教授であるホアキン・ゴラチャテギは、英『ガーディアン』紙の取材に対して、「我々はこれまで、古代バスク人は硬貨を鋳造する時以外は文字を使わなかったと確信していました。この発見は、こうしたヴァスコン族と文字についての理解をくつがえす重大なものです」と語った。
今のところ研究者は、イルレギーの手に刻まれた言葉「ソリオネク」の意味しか解明できていない。現在のバスク語のゾリオネコ(zorioneko)の原形で、「幸運」または「良い前兆」という意味だ。
紀元前80年から72年にかけてイベリア半島で起こったローマ帝国の内戦「セルトリウス戦争」で、イルレギーの村は焼き払われた。村人たちが逃げる前に地中に品々を埋めた結果、この地域は「イルレギーの手」を含む遺物の宝庫となったが、ローマ時代から近年まで、ほぼ手付かずの状態で保存されていた。(翻訳:貝谷若菜)
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