今年のターナー賞は史上2人目の黒人女性、ヴェロニカ・ライアンが受賞
世界有数の美術賞であるターナー賞の2022年の受賞者が発表された。
毎年50歳以下のイギリスのアーティストに贈られる世界有数の美術賞のひとつ、ターナー賞。今年はヴェロニカ・ライアンが受賞し、同賞に輝いた史上二人目の黒人女性アーティストとなった。賞金は2万5千ポンド(3万500ドル、約400万円)。ライアンは今年、ホイットニー・ビエンナーレに出品するなどの活躍をしている。
最終選考に残ったヘザー・フィリップソン、イングリッド・ポラード、シン・ワイ・キンの3人には、それぞれ1万ポンド(1万2千ドル、約170万円)が贈られた。これらのアーティストの作品は、現在テート・リバプールで開催されている展覧会で公開されている。
ターナー賞の受賞者が1人だったのは、2018年以来初めて。19年は4人のノミネート者全員が受賞を分け合い、20年は受賞の代わりに助成金が提供され、21年にはアレイ・コレクティブがアーティストグループとして初めて受賞している。また、ダミアン・ハーストのサメのホルマリン漬けなど、同賞のノミネート作品をめぐって度々イギリス国内外で論争が巻き起こっている。
ヴェロニカ・ライアンの作品は、種子や果物のようなありふれたモチーフを大きく膨らませた、スケール感のある彫刻が特徴だ。その異常な大きさにもかかわらず、描写は奇妙なほどリアルだ。
カリブ海にあるモントセラト島で生まれ、ロンドンとニューヨークを拠点に活動するライアンは、人間や思想がどのように移ろい、どのように人々のトラウマが受け継がれていくのかについて考察する作品を発表している。
ホイットニー・ビエンナーレのカタログで、彼女は記憶を「汚れた歴史のようなもの」と説明し、お茶のような型にはまらない素材によって、それを表現していると語っている。作品のテーマは単純に聞こえるかもしれないが、彼女のつくり出すオブジェから、それを簡単に読み取ることはできない。
21年にライアンは、ロンドンで、1940年代から50年代にかけてイギリスの旧植民地ジャマイカなどカリブ海の国々から移民としてやってきた人々とその子どもたちを指す「ウィンドラッシュ世代」の記念碑の制作を依頼された。そこで彼女は、カリブ海の島に自生する果実のサワーサップやパンノキ、ギュウシンリをモチーフに作品を制作している。
ターナー賞の審査員は、ライアンについて、「ギャラリーとパブリックスペースの両方における空間、色、スケールの使い方が素晴らしい」と賞賛している。
ライアンは、38年の歴史を誇る同賞の受賞者の中で、2017年のルバイナ・ヒミドに次いで史上2人目の黒人女性となった。偶然にも、ヒミドが1983年に企画した展覧会「ブラック・ウーマン・タイム・ナウ」に、ライアンの作品が含まれている。(翻訳:編集部)
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