マドンナにジミー・ファロン、ジャスティン・ビーバーまで? セレブが「ボアード・エイプ・ヨット・クラブ」NFTの価格吊り上げに関与した疑い
12月8日、ボアード・エイプ・ヨット・クラブ(Bored Ape Yacht Club)のNFTコレクションに対する集団訴訟が起こされた。誤解を招くような販売促進に、多数のセレブが関わっていたとされる。
ボアード・エイプ・ヨット・クラブ(以下BAYC)に関する集団訴訟に名前が挙がっているのは、マドンナ、ジミー・ファロン、パリス・ヒルトンなどのセレブだ。BAYCのNFTコレクションの販売促進に関与し、報酬を得ていたことを公表していなかったとされる。
カリフォルニア州の連邦地方裁判所に提出された訴状によると、原告のアドニス・リアルとアダム・ティッチャーらは、こうしたセレブが推薦しているのを見てBAYCなどを手掛けるユガ・ラボ(Yuga Labs)からNFTコレクションを購入したという。しかしそれは、NFTの価値を吊り上げるための戦略の一部だったというのが彼らの主張だ。
また、ユガ・ラボの幹部がハリウッドのタレントマネージャーでBAYCのプロモートにも携わるガイ・オセアリーや暗号通貨取引アプリのムーンペイ(Moonpay)と組み、セレブにBAYCの宣伝を依頼しながら、その対価を支払っているのを隠蔽していたと訴えている。
オセアリーとそのクライアントの多くは、早くからムーンペイに投資をしていた。訴状では、一見「自然な」ものに思えるセレブの発言に対し、ムーンペイを通して暗号通貨やデジタル資産で報酬が支払われたとしている。
また、「被告による販売促進キャンペーンは大成功を収め、転売を含め数十億ドルの売上を達成した。(中略)有名人の推薦や誤解を招くような宣伝により、(中略)人為的にBAYCのNFTコレクションへの関心を高めて価格を高騰させ、(中略)水増しされた価格で販売することで購入者の損失を招いた」と原告は主張している。
訴状中で指摘されている事例の1つは、2021年11月にムーンペイが「こんなことがあった」と、ツイッターに投稿した映像だ。それはポスト・マローンがザ・ウィークエンドとコラボした「One Right Now(ワン・ライト・ナウ)」のミュージックビデオの一部で、ムーンペイのアプリでBAYCコレクションを買う様子が映っている。
原告の弁護団は、ブロックチェーン取引の記録ではマローンが2021年10月に140万ドル相当のイーサリアム(暗号通貨)を送金されており、これがBAYCの販売促進の対価として支払われた証拠となるものだと主張。ムーンペイの「こんなことがあった」という投稿の文言も、ミュージックビデオ内でBAYCを買う行為が純粋な関心によるものだとの誤解を招くとしている。
訴状ではまた、オセアリーが「セレブの人脈を利用してユガ・ラボをプロモートすることで利益を得る機会があると判断し、それを利用した」として、疑惑の黒幕的存在であることを繰り返し指摘。さらに、オセアリーはアーティストのライダー・リップスに接触し、BAYCにはネオナチのサブリミナルメッセージが含まれていると主張するのを止めるように言ったともされている。なお、ライダー・リップスとユガ・ラボは、現在リップスのNFTコレクション「RR/BAYC」をめぐる訴訟で争っている。
訴状に名前が挙がっているセレブは、オセアリーのクライアントであるマドンナ(ローリングストーン誌の特集でBAYCについて発言)、テレビ司会者でコメディアンのジミー・ファロン(自らの番組でBAYCとムーンペイを取り上げた)、ジャスティン・ビーバー、グウィネス・パルトロウ、ケビン・ハート、ラッパーのカリード、プロテニス選手のセリーナ・ウィリアムズ、NBAのワーデル・ステフィン・カリー2世(バスケットボール選手)などだ。
ユガ・ラボの広報担当者は、12月9日時点でコメントの求めに応じていない。また、ジャスティン・ビーバー、スヌープ・ドッグ、ザ・ウィークエンドの代理人も、ARTnewsと同じPMC傘下のメディア、『ビルボード』誌によるコメント要請には応じていない。(翻訳:石井佳子)
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