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爆発的人気のアバター作成アプリが作品を盗用? AI生成画像にアーティストのサインの痕跡

近頃、爆発的にユーザー数を増やした写真編集アプリ「Lensa(レンサ)」。10~20枚の自撮り写真をアップすると、さまざまなスタイルのポートレートをAIが自動生成してくれる「魔法のアバター」という新機能が大人気になっている。

画像生成AIがアーティストの作品を盗用した証拠だとして、イラストレーターのローリン・イプサムがツィッターに投稿したサインのある画像。Photo: Via Twitter

一方で、画像生成AIに不信感を抱いていたアーティストたちは、このアプリが生成したポートレートの多くにサインらしきものがあるのを見つけ、懸念を深めている。ネット上で自作を公開するアーティストは、画像の無断使用を防ぐために透かしやサインを入れることが多い。そのため、生成された画像に含まれるサインのようなものは、LensaAIが作品画像を盗用している証拠になり得ると主張するアーティストもいる。

この現象を指摘しているのが、ツイッターでローリン・イプサムというアカウント名を使っているイラストレーターだ。広く拡散されたツイートには複数の画像がアップロードされ、こう書かれている。「Lensaが生成したポートレートには、ぐちゃぐちゃになったアーティストのサインの跡がある。これはAIに作品を盗用された大勢のアーティストの1人が書いたサインの痕跡だ」

AIが作成したサインはすべて判読不能だ。そのため、Lensaの開発元であるプリズマ・ラボ(Prisma Labs)は、これは盗難の証拠にはならないとしている。

同社のCEO、アンドレイ・ウソルツェフは、US版『ARTnews』のメール取材にこう回答している。

「『アーティストのサインの痕跡』という捉え方は、ニューラルネットワークが既存の画像を組み合わせているという誤った考えからくるものだ。実際の画像生成のプロセスは、そうしたものではない」

ウソルツェフの説明によると、ニューラルネットワークは既存の画像から学習するものの、それが終了するとAIは学習素材となった膨大な画像データを参照することはないという。その時点で、すでに特定のスタイルを模倣する方法を習得しているためだ。つまり、AIはサインが「絵画」というカテゴリーの重要な特徴であることを学習したため、それを独自に作成するというのだ。

「今回のケースでAIが模倣した画像のカテゴリーは絵画だ。一般的に、絵画にはサインが入っていることが多い。AIはサインをこのカテゴリー固有の特徴として理解し、再現している。指摘のあった部分は、既存言語を使用しておらず、特定のアーティストのサインでもない」というのがウソルツェフの回答だ。

ウソルツェフはまた、特定のアーティストのサインが歪められたわけではなく、イプサムが言うように「変形」されたわけでもないので、この模倣は盗用にはあたらないと主張している。

だが本当の問題は、特定の個人の作品が盗用されたかどうかではなく、無数のアーティストたちの作品が、彼らに取って代わるかもしれない技術の学習に使われた可能性があることではないだろうか。(翻訳:野澤朋代)

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